デビュー曲「シンクロ」が史上最高の全国FM局パワープレイ数を獲得。シンガーソングライターにとってもっとも大事な要素である楽曲の良さとボーカルの魅力――ほとばしる切れ味と大らかな温かさを兼ね備えた――によって一気に知名度を上げてきた秦 基博の1stフルアルバム。心地よい疾走感をたたえたバンドサウンドのなかで(タイトルどおり)カラフルなイメージのメロディが広がっていく「色彩」ではじまる本作は、「シンクロ」「鱗(うろこ)」「青い蝶」といったシングルを含みながら、彼が持っている幅広いソングライティング・センスを示していく。ブルーズな空気を引きずるアコースティック・ギターをバックに、ひとつの恋を終わらせようとする男の心情をリリカルに描いた「君とはもう出会えない」、南米音楽のエッセンスを感じさせる、練されたコードワークが素晴らしい「Lily」、スケールの大きいメロディを宿したロック・チューン「トブタメニ」。耳の肥えた大人の鑑賞に堪えるクオリティと、10代の子供にもわかるポップ感を同居させた1枚といっていいだろう。(森朋之)