マフィアといえばイタリアの名物、我々は映画でしか見たことがないが、彼らは実際のイタリア社会において失業者への仕事の差配、公共事業の請負、政治家とのコネクションなど日本のヤクザは比較にならない影響力を有している。しかも本来民衆の保護者であったある種の牧歌性をも失い、利権の搾取と凄まじい暴力傾向を強めているのは本書の通りである。本書の主人公ふたりが車を爆破され、機関銃で殺害された事実は映画を超えたマフィアの凶暴性を如実に物語る。本書は94年のイタリア新政権成立で終わっているが、アンドレオッチ首相に代表される政治とマフィアの腐敗関係などは容易に解決される見込みはないと思われる。最後に、訳者がマフィア問題の専門家でないのは「あとがき」の底の浅さなどからやや残念に思った。