雑誌に連載されていただけあって紙面レイアウトや図版、写真の量やクオリティなどは、一般の郷土史物とは一線を画する感じの仕上がりである。
伝承の謎解きをするミステリの要素もあって、古代信仰と太陽信仰の関わりや、古代の都市計画の周到さ、神社仏閣の存在意義など、改めて知ることができる。
飛行機や新幹線で移動するとき、たとえそれが出張であっても、しばし非日常の時間が流れる。ぼーっと窓外を眺めながら緊張感がほぐれる頃、何気なくめくっている機内雑誌に美しいグラビアとともに紀行文やエッセイが載っていたりすると、妙に熱心に読んで、いつになく旅情を誘われてしまったりする。本書もそういう気持ちにさせてくれる一冊だ。
縁起を巡る旅という点では「新日本妖怪巡礼団 怪奇の国ニッポン」(荒俣宏)という類書がある。こちらは男性向け雑誌の連載をまとめた軽い読み物という感じで、国内27カ所の裏日本史や妖怪伝承を含む怪奇をアラマタ先生が紹介してくれる痛快な本である。年代的にも近代までカバーしているのが特徴だ。