ヘイル!ヘイル!ロックンロール(完全限定版 4枚組コレクターズ・エディション) [DVD]
価格: ¥8,900
チャック・ベリーの対照的な2つの横顔が登場する、内容充実の4枚組。『チャック・ベリー ヘイル!ヘイル!ロックンロール』は1986年のドキュメンタリー&コンサート記録だ。監督はテイラー・ハックフォード。横顔の1つは、ロックンロールというジャンルを定義する曲(「メイベリーン」、「ジョニー・B・グッド」、「ロール・オーヴァー・ベートーヴェン」その他たくさん)を次々と送り出したソングライターとしての顔だ。彼の書いた曲すべてに、ウィット、喜びのストーリー、ポエトリーが満ちている。ロックの重要なフレーズの大半は彼が作ったと言っても過言ではないギタリストであり、同業のトップミュージシャンたちが彼の60回目の誕生を故郷のセントルイスで祝うコンサートに駆けつけてくれるほどのショーマンだ。もう1つの顔は、本編からも特典映像からも伺えるのだが、とんでもない要求や予想もできない行動に出て、映画のスタッフやミュージシャンたちを引っかき回す、腹立たしいケチとしての顔だ。こうした2つの横顔が合わさって、自らを“ロックンロールの父”と呼ぶのも許せてしまう不思議な魅力を持つ男ができあがっている。
ハックフォード監督のオリジナルのフィルムはくっきりしたスクイーズ収録、デジタル・サウンドとなってディスク1に。盛りあがったコンサートでは、チャック・ベリーと最高のバンド(キース・リチャーズ、中心的役割のギタリストのロバート・クレイ、そしてベリーのオリジナルのピアニスト、ジョニー・ジョンソンらが率いた)が演奏する名曲ぞろい。ゲストにエリック・クラプトン(「ウィー・ウィー・アワーズ」でスローなブルースをつま弾く)、エッタ・ジェイムズ、リンダ・ロンシュタット、ジュリアン・レノン(父親がベリーの大ファンだった)。また、舞台裏の模様も伺える。ベリーが音楽専門にやっているのは、家のペンキを塗るより金になるからだと認めたり、疲れてへとへとになったリチャーズが「ストレスのたまるライヴだよ」と告白しながらも、彼のアイドルの前では雄々しく立ちあがっている(コンサートの1曲目、記念すべき瞬間を見逃さないように。チャックが曲の途中でキーを変えようとするが、キースは断固拒絶する)。
特典映像の3枚のディスクは、チャック・ベリーの横顔にさらなる情報をつけ加えている。秀でた映像ばかりだ。郷愁に浸るベリーがザ・バンドのロビー・ロバートソンとアルバムをめくる。クラプトン、リチャーズ、ジェイムズとの伝説となったリハーサル模様。屈託のない様子で何時間も(文字通り)リトル・リチャード、ボー・ディドリー、その他のロックのパイオニアたちとおしゃべりするベリー。だが、敢えて嫌なものを見てしまう、自動車事故から目をそむけられないタイプの人ならば、「The Reluctant Movie Star」が必見だ。ドキュメンタリーの1時間におよぶメイキングで、ハックフォードらこのフィルムを作ったスタッフが戦いのようだった撮影秘話を明かしている。チャック・ベリーはギャラを毎日現金で払うように要求し、その要求をのまなければ撮影を許可しないと言ったこと。ロサンジェルスの高級店ラ・ドームでのディナー・ミーティングに、マクドナルドのテイクアウトの袋を持って現れたこと。セントルイスのコンサートの2日前に、町を離れてオハイオでコンサートをやると宣言し、オハイオで声を枯らしてしまったこと。それでベリーのヴォーカル部分は後日、すべて別途録音しなければならなかった(もちろん、1日分追加でギャラを取った)。『チャック・ベリー ヘイル!ヘイル!ロックンロール』はオリジナルのままでも、楽しめる2時間だった。だが、未公開のさまざまな特典映像が追加され、そのすべてをハックフォードが紹介している本作は究極のコレクターズ・アイテム、絶対に買いだ。(Sam Graham, Amazon.com)