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中国共産党「天皇工作」秘録 (文春新書)

価格: ¥798
カテゴリ: 新書
ブランド: 文藝春秋
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対日洗脳完了報告書 ★☆☆☆☆
 中国共産党「天皇工作」秘録、誰もがこのタイトルを見れば、共産党による心理戦・政治的駆け引きの裏側や真相に迫る本と誤解するだろう。

 内容は、著者も野中広務はもちろん、中曽根康弘、渡辺美智雄、安倍晋三まですべてシナ共産党に工作されて懐柔されていることを自ら証明する駄作である。著者は何の疑いもなく、本当に心から日中友好と言う偽善を信じている。

 日本こそ明治時代から一貫して民主主義を貫いてきた国である。上海事変が国民党の侵略戦争であることを最も良く理解していたのが昭和天皇である。人間ここまで踊らされるものかと、逆にどん引きである。
日中関係における「天皇陛下」の政治利用 ★★★☆☆
中国共産党が、対日政策において
いかに「天皇陛下」の立場を政治的に利用してきたかがよく分かる書である。

親日家であった胡耀邦が失脚し、その後江沢民が反動的に歴史問題に厳しい態度を示した点を見ても
彼らの日本観や歴史問題に対する態度は普遍的なものではなく、
時の指導者のスタイルと中南海の内部事情によって大きく変遷するものであると言える。

親しくしていた胡耀邦を追い詰めることを由とせず、中曽根氏は靖国公式参拝を中断する。
一方、小泉氏は信念を曲げず参拝を続け、中国政府から相手にされなくなる。
どちらが正しいか、国益に適うは一概には言えず難しい問題である。

日中の懐の深い政治家どうしが丁々発止の駆け引きを行い、
個人的な信頼関係を築いていく様子は奥が深い。
いまの日本の政治家にそうした人間性の深みを期待できるのか、非常に疑問である。
中国指導者の天皇観を明らかにしながら日中現代外交秘話を語る ★★★★★
天皇制の存続容認、戦後賠償の放棄など、中国指導者の「戦略的」な対日政策を知ることが出来ます。

また、国と国の関係であっても、基本のところは政治家個人あるいは外交担当者個人の考え方に帰結するさまも垣間見ることが出来ます。

本書の基本的な論調は、日中の双方の政治家・外交当局が、国内のナショナリズムを抑え込みながら交流を進めた、という感じです。しかし、中国の方針として、反日教育により「人民」の不満を日本に向けさせて共産党に向けさせないようにしている面もあり、現実はもっと複雑だと思います。とはいいながら、「敵を知り」という観点、そして日本人の視点からみた中国の一面を知るという観点でとても有用な本であると思います。
「対日」の距離に悩んだ中国指導者たち ★★★★☆
本書を読むと、外交が互いの外交官とだけやり合っていればいいのではなく、色んな人が絡んでいる、ということが分かる。トウ小平が、田中清玄に天皇訪中を依頼するのを始め、中国側は田中角栄から山崎豊子まで、日本国内の様々なアクターに布石を打って、日本全体を親中に変えようと次々と作戦を繰り出す。中国の国際舞台へのゲートウェイになってきた対日関係は良好な方が良いに決まっているのだが、言動や態度によっては「親日派」として、指導者の首が飛ぶ原因にもなる。本書は、中国の最高指導者たちが非常に対日関係のバランスの取り方にどれほど神経を使ってきたかを明らかにする。

確かに西側先進国の一角である日本に招き入れてもらったり、日本に応援してもらうことで、国際社会に地位を築くという中国の戦略ははっきりしているのだが、それ以上にケ小平、胡耀邦、胡錦濤など0中国の指導者たちが日本や日本人と直に接触すると親日的になる、という風に感じた。これは日本も同じで、反共的だった元軍人たちを多数招聘した毛沢東の作戦にも通じる。直接話し合えば、仲良くなるという国際交流の基本を再認識した。

文書の検討はもちろん、150人の関係者取材を敢行したと言うだけあって、本書はとにかく取材量が厚く、あたかも天皇訪中に至るまでの展開は、その場にいるような感じで小説を読むようなようなスリルだ。また、「日中関係」という大きなテーマに「天皇」という串を刺すことで、コンパクトかつ散漫にならない、筋の通ったストーリー展開になっている。読んでいて楽しい本だった。
タイトルで「勝負あり!」 ★★★★★
 まずそのタイトルで思わず手に取ってしまう。「中国共産党」で「天皇工作」ときた上に「秘録」である。そしてページをめくると、一つ一つのエピソードが「秘録」の名に違わない「裏の日中関係史」のつづれ織りである。
 冒頭の目白の田中角栄邸でのやり取りを始まりとして、中国の時の権力者が「天皇」という中国共産党とは一見相容れない存在になぜこだわり、どのような交渉を水面下で行っていたのかが、臨場感あふれる関係者の回想や叙述とともに浮かび上がってくる。筆者が取材した人数は150人以上にも及んだと言うが、これだけの関係者の言葉を集めるのに筆者が大変な労力を掛け、丹念な取材をしたことが、その生き生きとしたエピソードからうかがわれる。
 この本は単なる日中交渉の裏面史を記した歴史書にとどまらない。天皇訪中というテーマを縦軸に、通信社の北京特派員として、筆者が現場で直に取材した直近のエピソードが横軸として盛り込まれており、それらがうまく絡み合って読む者を飽きさせない。
 個人的には第3章の「天皇訪中への道」が非常に興味深かった。冷戦終結と天安門事件後という歴史の激しいうねりの中で、実現した天皇訪中に日中双方の権力者や政府関係者がどのような思いを込めていたのかが分かり、感慨深かった。新書というお手軽な形でこれだけの知的刺激を味わえる本は少ない。日中に関心のある人だけでなく、昭和史に興味ある人も必読の書であるといえるだろう。