物語は大学で美術を教えている「私」が同僚の数学教師の自宅に招かれるところから始まる。「私」はそこで秘蔵の絵を見せられる。赤錆色のスカートに青いスモックを着た少女。真珠の瞳。開かれた窓。窓から注ぎこむ柔らかい光。本物のフェルメールだ、と彼はささやく…。資産家でもないごく普通の家庭になぜフェルメールの真作があるのか。そんな疑問を抱く「私」に彼は長い間封印し続けてきたある事実を語り始める。
著者のスーザン・ブリーランドはアメリカの高校で教鞭をとるかたわら、雑誌に短編小説を発表している。フェルメールを題材にした最近の小説やエッセイには、トレイシー・シュヴァリエの『Girl With a Pearl Earring』(邦題『真珠の耳飾りの少女』)、シリ・ハストヴェットの『Yonder: Essays』などがある。(小川朋子)