レスリー・チャンのキャリアのなかでも、本作の役は、やや異質だと言える。台湾反日同盟の闘士で、捕らえられた日本軍から拷問を受け、護送中の船から飛び降り、上海に流れ着く男。強い意志を内面でたぎらすマンキョン役に、レスリーの新たな一面を発見できるのだ。助けてくれたチンピラのリクと意気投合したマンキョンは、暗黒街で頭角を現していく。チョウ・ユンファが主演したテレビドラマの映画版でもある。
   1930年代の異国情緒たっぷりの上海を背景にした、口ヒゲ＆黒のスーツ姿のレスリーとアンディ・ラウの2ショットには、つねに男の色香が立ちこめている。美女の登場によって2人の友情は狂い始めるが、男同士のダンスシーンなど、要所に友情を超えた何かを感じさせる本作。あくまでもヒロインは媒介であり、2人の男の微妙な「愛」が存在するという裏読みが可能だ。その意味では、レスリーは適役だったのかも。アクション場面も、なかなかに壮絶。その後、韓国のトップ俳優となったチョン・ウソンも顔を見せている。（斉藤博昭）