さらに、図版の美しさだけではなく、資料としての機能性も高く、使いやすい。前半部分では、「恐竜の定義」「発見の歴史」「復元の方法」「恐竜の暮らし」といった基礎知識を丁寧にフォロー。2002年までの研究成果や仮説も柔軟にとり入れられており、「恐竜は温血か冷血動物か」「恐竜の子育て」など、恐竜たちの知られざる意外な一面も多数紹介されている。
後半のデータページでは各恐竜を「鳥盤目(鳥の腰をもつ恐竜)」と「竜盤目(トカゲの腰をもつ恐竜)」というグループに分けて紹介しているため、恐竜間の類縁関係や系統が理解しやすい。また、見開きに大きく描かれた恐竜画、人間との大きさの比較、化石の発掘地の地図、生息年代を赤色で示した年表など、視覚に訴える工夫も多く、小さな子どもでも十分に楽しむことができる。
しかし、なんといっても本書を読みごたえのあるものにしているのは、多種多様な恐竜たち自身の魅力だ。悠然と湖面の水を飲むディプロドクス。静まり返った森の中にたたずむカモノハシ竜。大きな鎌のような爪を持つテリジノサウルス。真っ黒な羽毛に包まれたシノサウロプテリクス。彼らの息吹とともによみがえる、2億2500万年前の地球をぜひ体感していただきたい。(中島正敏)