本書の想定外読者であろう私が読んだけれども
★★★★★
理数系的素養皆無(そろばん4級保持なぞ口にも出せない)の私は最初から観念してでたらめに本書を読み始めた。どのように「でたらめ」か。頻出する数式やグラフを全く無視した。立ち止まることなく、斜め読みに近い感覚でとにかく次の行、次の行へと目線を下げていった。ただし、通常なら物臭なので脚注、訳注の類は最後にまとめて走り読みする性質(たち)なのだが、今回はその都度脚注に目を通した。昔読んだサイモン・シンの三冊の本のおぼろな記憶が、抽象概念をそれなりにイメージを持って読める箇所がごくたまにあった。理数系から離れて生物学系に話題がシフトしたときは、まれに竹内久美子の著作を読むときに味わえる「そんな、バカな!」という新鮮な驚きを抱けた。そして、沈まない太陽がないように、4日間経た後読了した。世知辛い摩擦に満ちた世界を生き抜くための知恵となるヒントを授かったような気が漠然としている。「先見の明を持たない」「難しい問題は解決しない」一見ネガティブな表明と受け取られるかも知れないが、本書を読めば、前向きで建設的なスマートな人生訓であることがご理解いただけると思う。