まず冒頭で、バイオニクスが生体機能を応用・模倣する技術であること、生活の質の向上を目的にすること、省資源、省エネ、環境にやさしいというキーワードをもつことなどが説明されている。これはバイオニクスを理解するうえでのよい手がかりになる。
全体は3分野、計71のトピックスに分けられている。バイオエレクトロニクスの分野では、味覚や臭覚などのメカニズムを利用したバイオセンサー、神経細胞をまねたバイオチップ、微生物やバイオを用いたエネルギー変換システムなどが紹介されている。それぞれダイオキシンの検出、学習する介護ロボット、クリーンエネルギーの生成などを実現するものだ。またヒューマニクス(生活環境技術)の分野では、遺伝子診断やオーダーメイド医療、臓器をつくる「万能細胞」、環境を浄化・再生するバイオ技術が、そしてロボティクスの分野では、血管中を泳ぐナノロボットやペットロボットなどが取り上げられている。
医療、福祉、厚生、環境、産業プロセスなど、バイオニクスの範疇は実に広大である。トピックごとの解説で全体像はやや見えにくいが、それがバイオニクスへのさまざまな角度からの入り口になり、あらゆる分野の人の関心を引き寄せるはずだ。(棚上 勉)