いろいろなテイストの小説
★★☆☆☆
21名の作家の短篇集。
こういった類の本は、新たな作家を発掘できることと
いろいろなテイストの小説が読めることが魅力である。
ベストコレクションとあるだけにかなり期待をしたが
おもしろいと思った短篇はそれほどなかった。
それでも以下の3篇はおもしろくてすらっと読めた。
■「みんな半分ずつ」
対等の関係を求める女性。男性はそれに窮屈になり
離婚へ発展。仕事のパートナーとしても解消。
個人的には「対等」のつきあいを考える人はけっこう
好きである。でもときにはその対等を甘えに変えること
が人間関係、とくに男女関係を考える上では重要か。
■「雪の降る夜は」
自殺を図ろうとした元看護師と患者が北へ逃避行。
何もかも捨てて電車に乗り込み、あてもなく北へ行く。
モノトーンの背景を連想させる情緒的な小説で、元気
が出ないときは、あえてこういったものを読みたくなる。
■「その日まで」
時効まであと数日の犯罪を犯した女性。その女性は
昔から運がいい。主人公の女性と一緒に買った宝くじが
あたり時効確定後、その当選金を取りにくるのではないか。
主人公の心の不安定さがうまく表現されていて、次の展開
が楽しみになる。運のよさがあだとなったラストには
手を打った。