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名文どろぼう (文春新書)

価格: ¥767
カテゴリ: 新書
ブランド: 文藝春秋
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気持ちがいい文章 ★★★★★
こちらのレビューをみて、「名文」の定義って難しいものなのだなぁと
思いました。
この本は、著者が集めた名文を、エッセイと案内の中間のような文章で
紹介したものなのですが、ここに載せられた文章を名文といってはいけないと
したら、どういうべきなのかと考えてみました。

・人が感じられる文章
・こころにすとんと落ちる文章
・温度を感じる文章

哀しさも喜びもあり、切なかったり楽しかったりする。
そんな温かさのある文章で、とても気持ちが良かったです。
笑ったり、うるっと来たり、いい文章に出会えたなぁと思います。

中でも、岡本一平から息子岡本太郎への電報は心に沁みました。
そんな文章の数々は、ユーモアがあるそしてときにはどきっとするほど
個人的な文章でつなげられています。
著者が、文章に出会ったときの、コツンと心に響いた感じが
伝わってくるようです。

著者の名文コレクションの一部とのこと。
続編の刊行を今から待ち望んでいます。
名文を書くには名文を知れ ★★★★☆
日ごろから名文や名言、面白い話に敏感で造詣も深い恩師が勧めてくれた1冊。単に名文が詰まっているだけでなく、この著者の名文の紹介の仕方がユーモアたっぷりで、一瞬、恩師が書いているのか、と思わせられる内容だった。

タイトルは、名文を書くにはまず、名文を盗んでしまおうという意図からつけられたもの。年に一度どこかの保険会社か何かの主催で、一般の川柳を集めてその中から大賞を決めるといった川柳でも、夫婦ものは笑える。本書でも同じテーマは一見、辛辣ながら背景に愛情が見え隠れする。

また名文に関するものということで、外国語との絡みでも名文が生まれるのだが、語学習得の天才、シュリーマンは2度くらい登場する。語学習得という点で大杉栄が並べてあるのには、つい笑った(本当は笑えない状況下にあったのだが)。逮捕される度に、次々と語学を習得したそうで、そんな彼の標語が、「一犯一語」。笑うと同時に精神の強さに圧倒される。また米原万里さんの、言語絡みのジョークも同じく笑えた。

また、言葉の誤用から生まれた小話、お金に纏わる笑い話、老いらくの恋を茶化したもの、人名のあれこれ、その他、お役人、占い、悪口、においなど、世界共通のテーマに沿って、言葉の裏に隠された本音を引き出している。後半はかなり実践的な名文の数々が並ぶ。

でもやはりグッと胸に来るのは親への愛がみえたとき。これまた一般の公募で集められたこどもの詩から父親への温かい思いが読み取れる。この詩を読んだ著者の息子の一言に応戦する著者、という遣り取りに笑いながらも同じく温かさを感じた。
竹内氏の「引き出し」の一端が垣間見えて興味深い ★★★★☆
 著者の竹内氏は読売新聞の編集手帳の執筆者。2001年から今に至るというから担当し始めたのは46歳か。いつも竹内氏の「言葉」への博識に驚かされているので、その頭のなかの引き出しをのぞいてみたくて手に取った。
 たんなるダジャレのような言葉あそびもあれば、人の情や業の深さを端的に切り取った警句もある。原典からの直接の引用もあれば、続・世界の日本人ジョーク集 (中公新書ラクレ)やお楽しみはこれからだ―映画の名セリフなどのタネ本からの引用もある。全体として何かまとまったテーマがあるわけではないが、言葉というのは人と人との関係性を射影してまことに面白いものだとあらためて思う。男性は年をとるとダジャレに走る人が多いが、それは「論理を伝える道具」としての言葉から、「関係を伝える道具」としての言葉に関心が移っていくからなのかもしれない、などとつらつら思った。
 ともあれ、巻末に大量の参考文献が掲載されている。竹内氏の「引き出し」の一端が垣間見えたということでは目的は達した。さて、これから竹内氏の後を追って勉強だ。
おやじギャグの宝庫 ★★★☆☆
名文というより、しゃれた文章、泣かせる文章を著者が軽妙に料理しておもしろおかしく提示したアンソロジー。
新聞のコラムのような短くもユーモアとウィットに富んだ味わいである。しかし、基本的に、サラリーマン川柳と同レベルのユーモアであり、おやじギャグ満載で、中年層にしかこのおもしろみは通じないかもしれない。一気に読めてそれなりに楽しませてもらったが、他の人も書いているように文章指南や模範例文集では決してないので注意が必要である。
文章技術の本ではなく、日本語を楽しむための本 ★★★★☆
新書の氾濫状態がひどくなってからしばらくたつが、本書は分野の面でも分量の面でも新書にふさわしいもの。久々に一気に読める内容と読みやすさだった。
まえがきから引用するなら、要するに著者が「半分は道楽で採集してきた」「しゃれた言葉や気の利いた言い回し、味のある文章」あるいは「心をくすぐる言葉、文章」の引用集である。巻末の本文から抽出するなら、著者が「生きるうえで影響を受けた」文章も収録されている。
だが、ただの引用集ではなく、なぜその文章がすばらしいのか、その背景にあるものは何なのかということを、著者の経験や照らし合わせ、絶妙な解説でつないでいる。また、単なる名文だけでなく、「ちょっといい話」「ちょっと泣ける話」とも言えるエピソードも豊富。
名文の分類の仕方、つなぎ方、抽出の仕方もうまいが、なんといっても著者自身の文章もまた軽妙かつ名文になっている点が、大いなる付加価値であろう。
タイトル「名文どろぼう」とは著者の命名だが、「盗んだ」ものを再構築して別の価値ある作品にしているのだから、盗まれた側もむしろ光栄に思うのではなかろうか。短歌や詩の作品まるごとを転載することが「引用」にあたるかどうかという議論がかつてあったとはいえ、もしそういう問題が出ても、引用元の作家たちは笑って許してくれると思う。
引用の数は、評者が数えただけでもざっと二百数十。個人的には落語からの引用に面白いものが多かった(もともと落語はそういうものだが)。
ただ、帯の文句「名文を引用して名文を書く技術」と「当代随一の名文家が贈る空前絶後の文章術」は、いかがなものであろうか。著者が名文家であることは否定しないが、本書に名文を書く「技術」は見当たらない。文章術や文章作法の本だと思って買うと、肩すかしを食らうと思う。読者に文章指導をしようという意図は本書には感じられないのだ。まえがきにある「書いていて楽しかった。日本語にまさる娯楽はないと思っている」という一文こそ、著者の基本姿勢なのではあるまいか。
とはいえ、中身のすばらしさには変わりない。続編の刊行を望む。
(追記)p.169にある「米国史上で最も体重の軽い大統領は第二十七代のウイリアム・タフトで、百六十キロあった」というくだりは、「最も体重の重い」の間違いではないかと思うのだが……。