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マインド―心の哲学

価格: ¥4,980
カテゴリ: 単行本
ブランド: 朝日出版社
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誰にでも開かれている問題について、誰にでも読める文章で書かれている ★★★★☆
本書は、アメリカの哲学者ジョン・R・サールの『philosophy of mind』の邦訳版だ。
訳者によると本国ではすでに「大家」らしいが、このサールという名を聞いても日本
でわかる人も少ないだろう(僕も読むまで知らなかった)。むしろ日本では、チューリ
ングテストに対する反論として有名な「中国語の部屋」の方が有名であり。何を隠
そうこの著者のサールこそが、あの「中国語の部屋」という論を立てた張本人なの
だ。

本書のテーマは、タイトルどおり「心」。我々に宿る心とは、いったい何ものなのか?
そのメカニズムは?そして身体とはどのように関連づけられるのか?そういった問
題をめぐる、約400ページの大著だ。

しかし、大著ではあるものの、議論の裾は幅広く開かれている。なによりも、この種
の本を手に取ったことのない読者さえ、前提知識なしに多少の体力があれば読み
進められる。そこが大いに評価できる。

まずデカルト由来の物質世界とまた別の心的世界の存在を説く物心二元論、そして
それを否定する唯物論の議論の各種解説から始まる。ここらへん、日本人には実は
ピンとこない問題なのだ。なぜ心を「在処」がここまで西洋で問題になるかというと、
きわめて宗教的なバックボーンに由来している。その点から、著者本人の主張の前
にここまで厳密に、かつわかりやすく「ここまでのあらすじ」を説いてくれると、だれで
も興味がわき出てくるだろう。

いったい心は観念世界の質なのかそれとも、脳内のニューロンやシナプスによる単
なる電気的信号の連続にすぎないのか。神経生物学に依拠したという著者の結論
は、いわゆる「折衷案」なのだけれど、そこまで深遠な論考と他人への反論とで厳密
に積み上げた、そのプロセスこそ見るべきものがある。

今ここで購入を迷っているあなた。あなたの中で今も心は宿っている。それほどまで
に身近な論題であり、歯ごたえはあるが一度は手に取ってみるのもどうだろうか。
心の哲学への、第一級の入門書 ★★★★★
著者サールは、心の哲学という分野を牽引してきた主要な哲学者。第一線の人による入門書。学問分野の状況を単にまとめたものではない。サール自身の主張もふんだんに含まれる。それ自体が哲学書であるような、哲学入門書だ。筆致も非常に簡潔ながら、しっかりと確実に書いてある。信頼の置ける、素晴らしい本だ。

議論はまず、心の哲学の一般的なトピックを列挙することから始まる。そして、典型的な対応としてデカルトの回答が挙げられる。ここでのデカルトは、教科書的なデカルトである。分析哲学にはよくあることだが、その歴史的正否は気にしない方がよいだろう(例えば、デカルトは意識の内容の確実性について、意識の存在の確実性と同様に語っただろうか。狂気の想定は何を意味するのか。)

ついで、現在の議論状況を形作った様々な考えについて語られる。唯物論と二元論を中心に、行動主義、機能主義、消去主義など。ここの記述はとてもよくまとまっていると思った。ただし、消去主義の扱いに対してはやや簡単すぎる印象を受けた。機能主義については、当時の熱狂が伝えられる。当事者であったサールならでは、である。

それに続き、唯物論の批判とサール自身の見解を述べていく。ここは本書の最大の論点である。唯物論に対し、サールはそれがクオリアを一人称的に説明できないと批判する。そして、心的/物理的という二元論を廃す。物理的世界に一人称的存在論を組み込んで拡張するのである。この議論は入門書であることもあり、簡潔に書かれている。説明が足りないと感じたが、それはサールの専門的な論文を読んで検討するべきだろう。一つの独自の見解としては、十分に提示されていると思う。

ここまでが心に対する一般的な見解の検討。それ以降は個別のトピックの議論である。志向性、心的因果、自由意志、無意識、知覚、自己。これらは専門的であり、それ以前に比べてやや難しい。特に志向性の議論はかなり難しいのではないだろうか。分析哲学の他の知識が必要とされるため、一読では難しいだろう。だが、議論は丁寧になされている。折りに触れて読み返す価値のある部分である。また、すぐには納得できない議論も含まれていた(ヒュームの因果論批判への応答など)。

自己に関する最後の議論は興味深い。まず、その前の自由意志についての議論において、自由意志の存在も非存在も、確実な議論はないとされている。そして、自由意志に基づいて決定を行う行為者(agent)として、自己を要請する。その自己は、自己に関する直接的経験が存在しないため、実質的ではなく形式的である。この形式的自己の要請は、非常にスリリングで面白かった。心の哲学から社会哲学へとつなげていく、サール独自の議論であろう。

本書は何よりも、心の哲学の第一線の哲学者の手になるものとして貴重である。また、簡潔でまとまりよく書けている。もちろん、様々な見解の扱いに関しては、様々な意見があろう。しかし入門書として勧めることのできる、素晴らしい本である。心や脳に関する雑な議論が溢れる昨今、この本の知識くらいは共有されてほしいものだ。
色は濃いけど、よくまとまっている心の哲学の入門書 ★★★★★
心の哲学の第一人者、ジョン・サールによる心の哲学の入門書。
当然、サール自身の主張は色濃く反映されているが、心の哲学のトピックを広範に取り扱っている。
難解な哲学用語も最小限に抑えられており、よい入門書だといえよう。


サール自身の立場は、生物学的自然主義である。
彼は、意識とは、胃における消化などと同じで、脳によって生物学的に作られたものだとする。
しかし一方、意識とは一人称・主観的なものであり、客観的な方法では捕らえられないとして、唯物論を却下する。

サールは、心の哲学で多く見られる、言語の誤用による混乱を批判して、論点を整理している。
例えば、物的/心的のような対立は、その設定自体に問題があると指摘する。
これは、サールの師が、言語学者でもあり哲学者でもあるオースティンであることにもよるだろう。

論点の解体と、議論の場の設定が、ある意味で本書の行っていることだといえるかもしれない。
何がすごいのかさっぱり ★★☆☆☆
最初のまとめはよかったのだけど、サールがいったい意識について何がいいたいのかわからない。っていうか当たり前のこと言ってるようにしか思えない。つまり

「わからないものはわからない」

って。それをわかるような気がするとこが落とし穴なんだとか言ってるようなだけの気がする。

これ読んでも、意識が何かなんてさっぱりわからないと思うし、なんだか何も言ってないに等しいような本だったけど、僕がばかなんだろうな。

だけど、こんな本が「すげー」とか思われることがまずいんじゃないか?ってちょっと思ったりもしたけど。
わかりやすさの限界に挑戦。 ★★★★★
哲学だけではなく、心理学や脳科学、生物学の知識も動員して書かれた「心の哲学」(心とは何か?)についての包括的な入門書です。
この分野で有名な争いと言えば、「心身問題」(ご存知無い方は、本書を読めば非常にわかりやすく書かれていますのでご安心を)についての二元論からのアプローチと唯物論からのアプローチですが、著者のサールはこれをどちらも誤りだとし、解決策として独自の「生物学的自然主義」を打ち出しています。
これで本当に「心身問題」が解決できているかどうかは、読者が判断するべきなのでしょう。


本書の一番の特長は、あまり哲学に触れたことの無い読者でも理解できるように、哲学的な専門用語を使用するのをできるだけ抑えて書かれてあることでしょう(わかりやすさの限界に挑戦しているかのごとき平易な文章です)。
また、訳が良いので文章がとても読みやすく、注釈も豊富です。

流石に哲学の知識を全く持たない方が読むのはかなりキツい部分もあるかと思いますが、それでもわかりやすい丁寧な説明でなんとかついていけるレベルではないでしょうか。

「心の哲学」という言葉にほんの少しでも「心」を動かされる人にとっては間違いない一冊です。