はじめての文学シリーズ
★★★★☆
このシリーズは図書館ではヤングコーナーなどに置かれている本です
が大人でも十分に楽しむことができます。
今まで直感、評判で読む本を選んでいた私にとってこのシリーズとの
出会いは価値のあるものになりました。
全12巻を読み、贔屓の作者を見つけることが出来ました。ぜひとも全
12巻、読むことをお勧めします。あなたも贔屓の作者を見つけてみてく
ださい。
宮本輝
宮本輝先生の作品は面白かったのですが自分の肌には合いませんでし
た。なので星4つとさせていただきました。
収録作品は
『星々の悲しみ』
『真夏の犬』
『力道山の弟』
『トマトの話』
『力』
『五千回の生死』
『道に舞う』
の7点です。
肌が合わないなりにも『星々の悲しみ』は面白かったです。ネタばれ
になってしまうので詳しく書くことは避けますが主人公の友達の有吉が
すごく素敵でした。
若い読者の皆さんへ
★★★★★
幼年期〜青年期を扱った作品を中心に編まれたアンソロジー。宮本輝氏は、自身の歴史、とりわけ幼年期〜青年期をしっかり心のうちに保存しているかたのようです。そのためばかりではないでしょうが、この年代を描いた作品には、何とも言えないリアリティ、質感と重量感があります。本書に収められた中短編も、納得の佳品が揃っています。前述の理由から、主人公をどうしても作者本人と重ねて読みたくなりますが、テーマやモチーフは普遍的です。
たとえば・・・
・頼りなげな子どもの思いがけないたくましさ
・やがて訪れる現実の厳しさと大人世界に対する戸惑い、葛藤
・親や大人から与えられるある種の不条理
・生老病死や貧しさといった避け難い宿命
また過酷な宿命の中で美しさ、高潔さを損なわずにいる人が存在すること
・若者らしい弾力のある心と行動
・どんなに時を経ても薄らぐことのない後悔
・若さゆえの思い込みや嫌悪、激しい感情の揺れ
などなど。多くの人が、経験し、味わうことが描かれていると思います。
また、宮本作品のもつ哀感を帯びた抒情性や、「死んだダンプカーの腐れ膿」といった表現の印象深さも心に残ることでしょう。
どの作品も文庫に収録されており容易に手に入りますので、興味をもたれたかたはぜひ読み進めてみてください。宮本氏の本は、年齢の変化とともに違った感想がわいてきて、何年でも読めます。コストパフォーマンスがよいのです。「力」は、宮本氏の代表作になるであろう(まだ執筆途中ですが)自伝的大河小説『流転の海』シリーズに重なるエピソード。長編に挑戦してみたいかたはこちらもどうぞ!