誘拐モノだが後半の展開が…
★★★☆☆
平凡な庭師のミッチはある日突然、最愛の妻ホリーを誘拐される。身代金は200万ドル。到底用意できる額ではないが、犯人は本気であることを示すため、ミッチの目の前で通行人を射殺する。殺された通行人は、ミッチのかつてのルームメイトだった。偶然の一致か…。
よく練られたストーリーでなかなか読ませるが、個人的には後半、この展開はないだろう、という感じ。作者の思い入れだけでストーリーが進み、いまいち盛り上がらない。
最初に読むクーンツとしてベスト
★★★★☆
本書のベストセリフ
「単なる生物学上の関係が、
社会的地位を与えるべきではない」
クーンツ熟練の技が爆裂した傑作。
ただの庭師がハイテクを駆使するプロの犯罪者集団を退治してしまう傑作。
ど素人がプロに勝ってしまう傑作というと、
山田正紀 の「火神(アグニ)を盗め」 が世界一の傑作だろうが、
「火神(アグニ)を盗め」 より本書の主人公の状況は不利なので、
武器も金も仲間も用意出来ないただの庭師が、
知恵を巡らせてプロの殺し屋に勝つ過程は、
大企業の援助を受けられない本当の一般市民には、
素晴しいカタルシスであろう。
250Pまでが圧巻である。
不利な状況が加速し続ける。
普通の作家なら200Pで現れた味方を素直に味方にするだろうが、
それさえ敵に回る。
普通の作家なら、ただの庭師といっても、アメリカ人なので、
実は従軍経験があり、殺しのセンスもあったと設定したくなるところだが、
クーンツはそんな逃げは打たない。
銃の安全装置を見つけるのに苦労する本当のただの庭師が主人公。
銃なんて使ったことがないので、
始めは使い慣れた枝切バサミやバールやスコップやレンチを武器にするのだが、
銃の扱いになれたプロにそんな攻撃が通用するわけがない。
主人公は使い慣れた道具を全て敵に奪われる。
が、敵は庭師の道具には馴染みがない。
馴染みがない道具を持ったせいで、自滅する敵のシーンも傑作。
それ以後は銃撃戦がメインだが、
普通に撃ち合いしても負けるのは明白。
如何に自分は隠れて不意打ちするかが焦点になる。
庭師としての植物の知識を生かして、
茂みに隠れながらの攻防戦は、
豊富な植物の知識と美しい自然描写で、
文学的深みに達した感動を呼ぶ名場面。
スーパーナチュラルもスーパー兵器も出てこない
ただのサスペンスだが、
ストーリー展開の面白さに徹した王道の小説。
小道具に頼らなくても面白い小説は書けるという証明がこの作品。
SFやホラーに抵抗ある人もすんなり読めるだろう。
最初に読むクーンツとしてはベストだと思う。
クーンツに偏見があり読んでない人はすぐ読め!
愛と正義は勝ちます!
★★★★☆
『サイレント・アイズ』以来約2年ぶりのクーンツの作品だ。
1年に1作品のペースで書いていたようだがこのところペースが遅くなっていますね・・・
中身的には、いつものパターン(そのパターンが気に入っているのだが)で「愛と正義が勝つ」です。本作品は、特にそのパターンが顕著だと思う。
しっかりとしたプロットに裏打ちされた作品となっており、あっという間に読み終わる。
文章が良い
★★★★☆
ホラー作家のイメージが強いクーンツだがこの作品はホラー的要素の無いサスペンス小説。設定やプロットに凝った所はないが、そこは稀代のストーリーテラーであるクーンツらしくぐいぐい読ませてくれる。そしてクーンツの特徴である文章のうまさがほとばしっていて、それが面白さに深みを与えている。
例えば主人公が犯人から妻が誘拐されたことを知らされ、脅しのために圧倒的な暴力の行使を見せられたときの感情をこんな文章で表現している。「ショックよりも、これまで感じたことがなかった別の次元に気づかされたために立ちすくんだ。迷路に閉じ込められているネズミが、見慣れた通路から上をはじめて見あげ、ガラスの蓋の向こうの世界を、物陰や人影、不思議な動きを見たようなものだ。」ミステリーの世界でこれだけの文章が書ける人はそういないのでは。