今の産業界はマキャベリには居心地がいいだろう。現代なら君主になるのに生得権は必要ない。400年前にメディチ家からの恩寵を取り戻すために彼が著した書物にあるように、一時的な冷酷さがあればいいのだ。マキャベリのような賢人なら、どんな状況でも出世できるだろう。フォーチュン誌のコラムニスト、スタンリー・ビングも賢人である。彼は、実生活では別の名前でマスコミ勤めをしていて(誰であるかを特定できないにしても、勘の鋭い人なら、彼の出すヒントをつなぎ合わせて社名を推測できるだろう)、初めて1984年にエスクァイア誌の巻末に文章を寄せはじめた頃から、われわれのスパイとして企業に関する情報を教えてくれていた。『What Would Machiavelli Do?』でビングは、経営合理化のために解雇すべき人に関してアドバイスし(まずはコンサルタント、最後は秘書)、従業員に好かれる方法(「従業員には特権を与えよ…彼らが会社の金を使っているうちは、彼らを支配できる」)や、なぜ、四の五の言わせず(「方法のひとつは、彼らが話している時に、ぞんざいに話を遮る」)、とっちめる(そうすれば、相手に苦痛を与えるだけでなく、その仲間も同じ目にあわせるつもりであることがみんなに分かる)ことが重要なのかを教える。
この本の最も重要な教訓は、つねに自分を愛し、自分の行いに対して他人に絶対に謝らず、たとえ全くの失敗であったとしても、真実は融通が利くものなので、自分の好きなように曲げることができると思え、ということだ。道徳性を超えたこの本のおもしろいところは、ビングが客観的な立場に立ち、無慈悲なアドバイスを、理解しやすい手引きの形で表現している点だ。これが風刺に満ちた書であることは、アドルフ・ヒトラーとポル・ポトの夢想を、サンビームの元最高経営責任者「チェーンソー」ことアル・ダンラップに代表される今日の財界人の思考に結びつけるくだりなどに、見いだすことができる。首を切って殺すという点では、ゲームは違っても、ルールは同じなのだ。(Lou Schuler, Amazon.com)