新時代を画した作品「コンタクテ(接触)」(1959~60年)では、聴覚体験の勇ましくも新しい世界が導入され、伝統的な音楽では展開が線的に流れるが、それに代えて、より大きな文脈とはかかわりのないそれぞれ特定の音楽的身振りの「瞬間(モメント)形式」――シュトックハウゼンが“現在”の正当性に意識を集中するときのキャッチフレーズ――という概念を重視する。彼は純粋に電子音だけの作品という独創的な考えを思いついたが、このセカンド・ヴァージョンでは2人の生身のプレーヤー(ピアニストと打楽器奏者)が加わって、あらかじめ録音された一連の周波数と交流、つまり“接触”する。
第一印象では、「コンタクテ」は35分間にわたって続く意味不明の混沌とした騒音としか思えないかもしれない(もっともこれは、逆説的に聞こえるかもしれないが、非常に高度のレベルまで構想が練られているのである)。理論は忘れて、音楽に科学的客観性という威信を付与するといった非現実的な夢は忘れて、ただひたすら、げっぷ音やガーガーいう音、ブーンという音など、電子的な音の流れに耳を傾けてみよう、そうすれば終末部にくるころには、それらの音も穏やかな雲のようなもやに変わっていることだろう。それは目の覚めるような音風景であり、現代音楽における革命のとりわけ重要な時期に関するドキュメントである。(Thomas May, Amzon.com)