まわり道 デジタルニューマスター版 [DVD]
価格: ¥3,990
ヴィム・ヴェンダース監督の原点ともいえる、ロード・ムービー3部作のひとつ。作家を志望するも、何を書くべきかで思い悩む青年ビルヘルムが、ドイツ国内をさすらいながら、書く目的を模索していく。旅の途中、彼が出会うのは大道芸人の老人と少女、女優、詩人志望の男など。“旅の仲間”となった彼らとの会話により、ビルヘルムは作家としての方向性を見出していく。
“人生の先が見えない”ビルヘルムの心の苦闘は、時を経て、国境を越え、現在の日本でも共感を誘うだろう。安易に女優と結ばれることもなく、自分自身を見つめることに必死になる彼の姿は痛切だ。そんな彼の心象を代弁するかのように、ドイツ各地の寒々しい風景が多数出てくるが、流れるような横移動のショットなど、随所に名カメラマン、ロビー・ミュラーとヴェンダースの映像センスがうかがえる。共演者では、本作で映画デビューし、言葉を話さない少女を演じる、当時13歳のナスターシャ・キンスキーが鮮烈な存在感。映画の後半、ビルヘルムがビデオカメラを手にする何気ない場面は、彼とヴェンダースの姿が二重写しになり、感慨深い。(斉藤博昭)