綾戸智絵、11枚目のアルバム（ベスト盤は除く）。98年のデビュー以降、5年で11枚ということは年2枚のハイペースだけど、この人の創造意欲はいっこうに衰えを知らない。デビューが遅かったぶん、それまでためてきたものを一気に吐き出そうとでもいうのだろうか。その迫力に圧倒される。でこの作品だけど、感じとしては99年の『Life』にやや近い。ピアノの弾き語りによるしっとりとした味わい、という点に共通点があるのだ。エネルギッシュなシャウトとコミカルな喋りがトレードマークの綾戸だが、ここではシンプルな編成で多彩なナンバーをじっくり、語りかけるように歌っているのが印象的だ。ハンク・ウィリアムスのナンバーからスタート、ジョン・レノン、スティーヴン・ビショップ、渡辺貞夫の代表曲など、歌も選曲も見事なまでにジャンルを超越している。マリリン・モンローの映画曲も歌っているが、なんでも彼女の母親はモンローと生年月日が同じなのだとか。こういうしとやかな綾戸も魅力的。なお本作はCDとSACDのハイブリッド・ディスクである。（市川正二）