IPEの基本教科書
★★★★★
本書は、「あとがき」にも書かれているように、東京大学法学部で行われた講義を基にしたものである。
本書の内容は非常に明快であり、そして分かり易いものである。本格的に国際政治経済学を勉強したことがない私でも、十分に理解出来る内容だった。リアリズムの見方やリベラリズムの見方に始まり、通商政策や金融政策等々に加えて、近年注目が集まっている「開発と環境」についても紙片を割いており、外観的にではあるが包括的に国際政治経済学を学べるのが、本書の最大の長所といえるだろう。
個人的には、各章の最後に書かれているコラムが楽しめた(決して本書の内容が薄いという意味では無い)。例えば第3章「国際政治経済論における批判理論」の項目に書かれていた、アジアにおけるアイデンティティ意識については参考になった。「欧州人意識と比べてアジア人意識は希薄である」というのが、一般的な見解である。しかし、このコラムによれば必ずしもそうではない。すなわち、アジアの特殊性を強調するのは間違いだというのである。
他にも相対利得問題のアンケート結果や、経済対立における力の要素の指摘等々、コラムも楽しめるのは、本書の特徴といえるのかもしれない。
各章ごとにその章の「議論のまとめ」が書かれており、再度見直すことができるのは有難かった。国際政治経済学の入門者のための書籍として、同書は最適と言えるのではないだろうか。