だが、それは過去の話だ。現在のロスの姿は本作にある。お得意のカヴァー曲(スティーヴ・ミラーの「Shoo Bop」、ドアーズの「Soul Kitchen」、ジミ・ヘンドリックスの「If 6 Was 9」、サヴォイ・ブラウンの「Made Up My Mind」、ビートルズの「Tomorrow Never Knows」)の中には、思いがけない逸品である2曲(ロジャー・コリンズの「She's Looking Good」、オンブレスの「Let It All Hang Out」)や、悲しげで巧みな現代的なプロダクション・センスがあるものの、謎めいたフロントマンであるロス自身と同じく、何もかもが今の音楽シーンのかやの外に置かれているように聞こえる。
それに、たとえ、前のバンドであるデヴィッド・リー・ロス・バンドで見せた騒々しいヴァン・ヘイレンを彷彿させるハード・ロック志向を用心深く避けて、フックとグルーブを際立たせた「Say While the Night is Young」や「You Got the Blues, Not Me」、勇壮で生意気な「Thug Pop」、ヴァン・ヘイレンの「Ice Cream Man」のラウンジ風ヴァージョンを歌おうとも、大失敗だったラスヴェガスでのショーと、自らがインスパイアしたと自認する流行に乗ることさえできないじれったいほどの無能さを思い出させずにはいられない。(Jerry McCulley, From Amazon.com)