「The Downward Spiral (1995)」と遅れ気味の次作「The Fragile (1999)」のニヒリスト作品を発表した後、トレント・レズノー率いるナイン・インチ・ネイルズは、目新しさのないマンネリ化に陥ってしまった。「Downward Spiral」ではすごく画気的に聞こえたスラッシーで複雑かつメロディックなインダストリアルロックも、その限界を見せ始めている。レズノーの創意に満ちた音構造や冷やかで荒涼としたトーンはポップ音楽を凍りつかせるものがあるが、それもこれ以上進めなくなってしまったようだ。「The Fragile」からのシビアなリミックスのコレクションで、お決まりの激しい怒りも新鮮味がない。「Starf***ers Inc」の3種のバージョン をはじめ (これは「The Fragile」のベスト曲だから仕方ないが)、オリジナルをしのぐ曲はほとんどない。 そんな中、これまでに未発表だった曲がいくつか異彩を放っている。色あせた騒音にシンプルで力強いコーラスが投げ込まれている『Fragile』からカットされた「10 Miles High」、 ギャリー・ヌーマンがカヴァーする「Metal」はポップ・メロディーに秀でたバンドの才能を駆使している。レズノーは本当にうまいんだけど、それも永遠には続けらないようだ。