65年に名門エール大学を中退。上流階級の地位を捨ててベトナムで英語教師をしていたが、67年には志願して米軍の歩兵となり、かの地を踏んだ若きオリバー・ストーン。ヒロイックな正義感をもって戦場に赴いてしまった当時の自己を内省し、数々のすさまじい体験を告白した自伝的作品である。
   彼の分身である兵士（チャーリー・シーン）の目を通じて写しだされるのは、最前線での狂信的な隊長（トム・ベレンジャー）と班長（ウィレム・デフォー）の対立。そして極限状況下での虐殺、暴行など、人間最大の愚行だ。
   ストーンは脚本執筆後、約10年粘って映画化を果たし、アカデミー作品賞、監督賞、編集賞、音響賞の4部門を獲得した。サミュエル・バーバー作曲の「弦楽のためのアダージョ」をテーマ曲に、奏でたジョルジョ・ドルリューの音楽が、悲壮感をいっそう高めている。（轟夕起夫）