当然、CD版やカセット版の本作を堪能するのも大いにすばらしい経験となるに違いないのだが、やはり本書そのものが、セダリスのキャラクターに対する洞察力を余すことなく読ませてくれる、やはり基本的な素材であろう。
甲高い声の彼の弟ポールを物語りに組み込んだり、姉とふたり、良いカルマを得ようと、おとぎ話の良い子を一緒に演じた記憶を呼び起こしたり、セダリスの散文は、オープニングを飾る数編のコミカルな物語や、後に収められた鋭く胸をえぐるようなエッセイの数々に至るまで、音を外すことなく流れるのである。
セダリスは本書のなかで、自らのボーイフレンドとの喧嘩や、義姉の難産などについて躊躇無く語っている。姉のリサが、家族に関して書かれているのに憤慨したら、その様子だって書いてしまう。彼はやはり偉大なユーモア作家であり、回想録の筆者であり、さらには朗読家でもあるということを、この最新作において、改めて証明してみせてくれた。読者は彼のことを身近に知ることができ、それは幸運なことであると言わざるを得ない。もしかしたら、セダリスの直接の知り合いじゃないというのは、もっと幸運なことかもしれないけど…。(Leah Weathersby, Amazon.com)