本作で注目すべきポイントは、何といっても必殺の“双龍脚”を操る美貌の天才武術家・龍王院弘に尽きるでしょう。魅力的なキャラクターが目白押しの夢枕作品の中でもトップクラスの人気を誇る人物です。自分も一番好きなキャラです。

長野県の名家・九我沼家に取り付いた犬神を祓うために呼び寄せられた主人公九十九乱蔵。一方、龍王院弘は敗北により全てを失い、己を取り戻す流浪の旅の果て長野にたどり着き…という導入部。この犬神憑きの描写は迫真のリアリティーがあって凄まじいです。

本作は「闇狩り師シリーズ」でありながら、「キマイラ」の登場人物である龍王院弘が、自らを取り戻す復活の物語なのです。超人気作のキャラがリンクするという本当にぜいたくな作品です。しかも敵側の“贄師”で“鬼頸”を操る紅丸が底が見えないほど強い奴で、二人の対決は熾烈を極めます。

この新装版は元は二冊からなる大作を一冊にまとめたものです。複雑に入り組んだストーリー、数々の謎、徹底したエロス＆バイオレンスなど、抜群に面白い傑作です。龍王院弘のことを知らないって人でももちろん全然楽しめますよ。読み終わる頃には彼のファンになってるかも。