要注目の女性シンガー=イーデン・アトウッドの会心作。 1969年テネシー州メンフィスに生まれたイーデン・アトウッドは、ソングライター&アレンジャーの父を持ち、母方の祖父はピューリッツァー賞を受賞した著名な小説家・歴史家だったそうだ。父の影響で幼少の頃よりクラシック・ピアノを学び、高校時代にはクラシックとジャズのヴォーカル・トレーニングを受けた経歴を持ち、その後アメリカ音楽院在学中からシカゴでジャズを歌い、卒業後は女優・モデルとしても活躍していたという才色兼備のシンガーだ。 手短だが上記のプロフィールだけ見ると、単に血筋が良く容姿にも恵まれた一女性シンガーのようにも思えてしまうが、5歳の時に両親が離婚し、19歳の時に音楽家であった父親が自殺してしまうという過去を持つ。また、2007年には声帯にできた腫瘍の除去手術を受けたという。このような幾多の困難を乗り越えてきた深い人生経験も歌い手としての魅力をより際立たせているのかもしれない。そして、悲しい別れをした父親を尊敬する深い心も歌い手としての魂を支えているのだろう。本作は2009年3月にSSJレーベルのために吹き込んだ新作で、この歌唱力を耳にすれば巷に溢れる単なる美人ジャズ・ヴォーカリストとは一線を画していることが体感できる。(The Walker's 加瀬正之)