「You Talk Way Too Much」のような誇大妄想的でレトロな曲は、本作の最悪の部分と言える。彼らは同路線の緻密で魅力的なサウンドをすでに手がけているわけで、どうしても新鮮味のない展開になってしまう。しかしカサブランカスは、バンドを新しい建設的な方向へと少しずつ引っぱっていく。「12:51」は最初こそ貧弱な印象があるが、もの憂い雰囲気がやがてクセになってくるはずだ。一方「Reptilia」は、アルバート・ハモンドJr.とニック・ヴァレンシのギター・プレイが圧巻であり、また茶目っ気を感じさせもする。とにかく執拗(しつよう)なリフとメチャクチャなソロ・プレイのオン・パレードで、このバンドにはもっと伸び伸びとロックする機会があってもよいと思わせる演奏である。そして「Under Control」は、まさしく夢のようだ。もっと具体的に言えば、スミスが「Tracks of My Tears」を演奏している夢のよう、ということになる。
『Room On Fire』は、ザ・ストロークスがありきたりな作風からの脱皮をもくろんだアルバムとして好意的に受け止めるべきだろう。だが彼らは、完全に脱皮するには少しばかり慎重すぎた。勇気を持ちたまえ、君たち。(John Mulvey, Amazon.co.uk)