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二つの風の谷―アイヌコタンでの日々 (ちくまプリマーブックス)

価格: ¥1,476
カテゴリ: 単行本
ブランド: 筑摩書房
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美しい錯覚 ★☆☆☆☆
 本のなかには読まなければ良かった、という本がある。たとえば、高校時代、倫理の授業で強制的に読まされたサルトルの『実存主義とは何か』。ある悩みごとがあって、誰かに相談しようとする。サルトルは、その相談する相手を決める段階で、すでに結論を予期しており、したがって相談相手を決めるときに、すでに心のなかに結論は出ているというのだ。わたしには、思い悩むことがあり、これを読んでからというもの、自分で悩みを抱え込み、悶絶し、いっそうこじらせたことがあった。
 本書は、アイヌ語教室を立ち上げ、アイヌの子どもたちにアイヌとしての誇りを持たせようとした、著書の体験記である。二風谷というアイヌの象徴とも言える土地で暮らした日々の葛藤と子どもたちとの交流を描く。しかし、締め括りの部分で、著者の考え方に疑問符を打たせる。「自分のしたことは、本当によかったのかどうか」という自省を記していることである。なぜ、こういう自省を書くのか?こうした自省を書くことによって浮かび上がるのは「誠実な自分」という自画像である。これでは、せっかくの苦闘の日々の記述が、「誠実な自分」を描くための材料になってしまう。これを「誠実な人ね」と読む読者はいるのだろうか。葛藤の日々のあとにあるのは後味の悪さだけだ。