本書『The Working Poor』は、「忘れられたアメリカ」を考察している。そこでは、「何百万もの人びとが、繁栄の陰で、貧困と富の狭間の薄暗がりに生きている」。懸命に働く意欲があるにもかかわらず、そうした人びとにとっては、アメリカンドリームは手の届かぬ夢だ。ただ生き抜くためだけにもがく彼らは、貧困のふちにあまりにも近いところで暮らしているため、車の故障やありふれた病気といった小さな障害物でさえ、回復不可能な経済的転落を引き起こしかねないのだ。デービッド・シプラーは本書執筆にあたり、そうした多くの労働者から話をきき、利益も出世の機会もない行き止まりの労働サイクルに囚われた生活がどのようなものなのか、綿密に描き出している。ある者は、破綻している生活保護制度――弱者を救済するためのシステムだが、機能しないこともしばしばある――にすがり、またある者は、たとえ苦境に追い込まれようとも、政府からの援助のいっさいを誇りをもって拒否している。なかには、支援があるということさえ知らない者もいる。
「文化的に、米国は貧困の原因を解明していない。したがって、解決策も見えていない」とシプラーは言う。シプラーは本書で、現行の支援プログラムを効果的かつ合理的に改革する方法について詳述しているが、政府のみ、あるいは単独の改革のみで問題を解決できるとは考えていない。そうではなく、必要なのは、いくつもの改革を連動させることだ。そしてその手始めとして、「政府および企業の社会的義務と、労働および家庭の個人的義務を認識した」救済制度を制定するための政治的意思が必要とされている。シプラーは正しい方向に進む具体的手段として、現行の給与体系の改革、職業プログラムの増設(公立、私立ともに)、より公正な学校基金分配方法の創出、基本的な国民医療制度の導入などを提案している。
アメリカの貧困にあえぐ人びとに対する先入観に鋭いメスを入れる、説得力に満ちた1冊。 (Shawn Carkonen, Amazon.com)