「優劣」は、「殺す」ことを扱った一見シンプルながら味わい深い作品。飼っていたニワトリを食べる農村のくらしをテレビで見て、自分はそんなかわいそうなことはしないと言う幼稚園生の優子に、兄は「お前だって 今 牛 食ってんじゃん/同じじゃん」と告げる。優子はショックをうけ、肉を食べることをやめてしまう。6日目、ファミリーレストランで「…もういいよ/……よくがんばったね」という母親の言葉に、泣き崩れる優子。「私たちは他の生き物を殺して生きている/この歳で娘はその真理を体感したのだ/少しシットを感じたが/……愛(いと)おしかった」。この母親のモノローグが、子どもならではの方法で娘が真理を得たことへの羨望と、母の強くやさしい思いをうまく表現している。
絵はオーソドックスなものだが誠実に描かれており、誰にでも抵抗なく受け入れられそうだ。著者の個人ホームページ「COMPLEX POOL」で発表されたコミックを集め、単行本化したもの。(門倉紫麻)