この本でとくに力を入れているのがフラクタル(自己相似性)について。雲や稲妻や海岸線などは、どれだけ拡大・縮小しても形が変わらない。秩序がないと思われていた形にも、じつは数理的に表すことができたという話だ(つまり非定形とは、ほんとは非定形ではないということ)。
人間は、フラクタルについてだんだんとわかってくると、人工的にフラクタル図形を作り出していった(コッホ曲線とか、シェルピンスキーのガスケットとか…)。フラクタルは今後ますます研究が進んで、デザインなどに取り入れられていくだろうから、基本を知っておくにはよい。
フラクタル次元の話で1箇所だけ、数式(対数log)が出てくる。それ以外はすべてふつうの日本語で書かれているので、難しいところはほとんどなし。具体例も豊富。キュビズムの代表作とされるピカソの「アビニヨンの娘たち」から、日本の家紋12種まで、特徴的な形がつぎつぎと出てきて飽きない。眺めているだけでも楽しい。
全て「かたち」に関わることしか書かれていないとは言え、博学な筆者によって非常に広い視野で「かたち」について考察されているので、これから「かたち」に関わることを学ぼうとしている方にも、これまで「かたち」に関わることをある程度専門的に学んでこられた方にも一読の価値はある本である。