瓦屋根を知ることで、歴史の息吹きと奥深さが理解できる
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本書は、中国から伝来し、桟瓦(さんがわら:丸瓦と平瓦を組み合わせたもの)のように独自に発達した瓦屋根について取り上げている。また、写真をふんだんに使用しつつ、写真に付け加えられた文章や解説もコンパクトにまとめられている。
そのため、私のように瓦屋根に関心が無い方でも、次の3つのツボについて自然と好奇心を抱いてしまうであろう。
・壱のツボ:まだらに悠久の時をしのべ
・弐のツボ:反りの曲線を味わえ
・参のツボ:飾り瓦にこめた願いを探れ
本書の中で参考になった事柄として、瓦屋根がエコロジーであること、並びに飾り瓦に籠められた想いの2点が挙げられる。
まず、前者は全ての瓦屋根を取り替えるのではなく、劣化したもののみを交換することを知り、驚いた。これは、数十年が平均寿命と言われる現代建築では考えられないことであり、それによって建物の歴史が瓦屋根で華麗に彩られている写真で表現されている。
一方、後者は鬼瓦や鯱を飾る意味、並びに時代の変遷と共に鬼瓦が飾られなくなった理由やユニークな飾り瓦が登場する背景について知ることができた。
我々は、何らかの機会に瓦屋根を見ることがあると思う。その際、何となくぼんやりと瓦屋根を見ず、瓦の彩りや飾り瓦に注目することで、新たな日本の美を知ることができるのではないだろうか。そのきっかけとして本書は有益であり、感受性を養うことができ、豊かな人生を歩むことができるのではないかと考える。