美味しそう
★★★★☆
私が著者を知ったのは、『ベスト・オブ・ラーメン』『すし』『蕎麦』の原寸写真集ベスト・オブシリーズであるが、そこで彼に惹かれた理由は、それぞれの作品の”序に代へて”において
〜ラーメン(すし、蕎麦)をひたすら干渉するために編まれたもので あり、従って説明文からは「うまい」だの「まづい」だのという主 観的表現を意識的に省いた〜
と宣言しているにもかかわらず、写真が彼の洒脱な文章と合わさると、写真以上に「うまい」と感じられた点である。
彼の文章は、例えば嵐山光三郎のように味覚に関する比喩を駆使してその味を表現するタイプではなく、写真に寄り添いながらその力を発揮するものであると思われる。
*嵐山光三郎 寿司問答江戸前の真髄 ちくま文庫 等多くの作品が参考となる。
本作品も、写真と文章の割合は5:5程度だが、まぎれもない彼の作品であり写真以上に『うまそう』である。
ただ、この作品は高級なすし店数多くを紹介しているせいか、文章が多少格調高く、彼の洒脱な部分が隠れてしまったのが残念ではある。
よって☆は4つだがガイドとしてもエッセイとしても優れた作品であることは間違いない。
なお、東海林さだおと彼の対談が、「東海林さだお著 ずいぶんなおねだり 文春文庫」に収録されており、短いながらも非常に面白いので興味のある方はどうぞ。