ブラジルの作曲家ナザレーの作品の二台ピアノ版についての、館野氏の言葉が素敵です。二台ピアノ版は、ナザレーと親交のあった作曲家ミニョーネが、ピアニストである夫人と一緒に演奏するために、原曲（第一ピアノ）に、第二ピアノのパートを書き足したものです。底抜けに明るいのにどこか切ないタンゴ"Brejeiro"、夢見るように美しいワルツ"Eponina"など。

本書前半に収められたピアソラ作品は、若手の編曲家、啼鵬氏が館野氏のために書き下ろしたものです。ピアソラの自演を聞き慣れていると、多少違和感がある箇所が無きにしもあらずですが、単なるコピーにとどまらない、意欲的な編曲です。ややクラシック寄りな雰囲気。特に、緊張感にみちた静けさと激しさが共存する「天使へのイントロダクション」が秀逸です。（天使シリーズ「天使のミロンガ」「天使の死」は版権の関係で収録されず残念です）

技術的な面に限っていえば第１・第２ピアノともツェルニー40〜50番程度ではないかと思います。

「まずは、聴いてください！」といいたいところですが、残念ながら、CD（『タンゴ・デュオ!』『タンゴ・パッション』）は現在入手困難なようです。