もともと筒井氏のエッセイの文体が好きなので、満足した。
本人も言っているが、丸くなった、あるいは
「気の細やかさ」が前面に出てきたなあ、と言う印象。
もともとモラリストであり真面目なのが、氏の魅力であるが、
ここで言う真面目とは、ある価値に対する「仁義切り度」である。
筒井氏の場合、大きい価値から小さい価値に対するまで
「かなり平均的に真面目」だ。
「社会的・反社会的」に対する「拘り方」にも、それが出ており、
「高み」から「相対化」「再構成」あるいは「罵倒」「無視」
するのとは方向性が異なるように私には感じられる。
現代の瑣末な事柄と思われるなかにも大切な要素が含まれているので、
そこにも目を向ける筒井氏の優しさも際立つのだが、
それにしても、もう少し「自分勝手」で良かったかな。
この本には詳しく出ていないが、文学賞選考の際のコメントなど、
文学と言うものを愛している故でもあろうが、
若手に対して「優し過ぎる」ような気もする。
それはそれとして、最近の筒井氏の文章は滋味深い感じがして、
この本にもそれが滲み出ており、良い意味で微笑ましく思えた。
演劇やテレビ出演の話も多く載っています。
お勧めです。