William Wegman Polaroids
価格: ¥4,958
ウェグマンの作品には、犬をテーマにしたものではない写真や映像もあるのだが、「70年代なかばまでには、僕は犬とセットの男になっていた」と本人は皮肉まじりに語っている。その犬の名は、マン・レイ。スポットライトを求める映画スターの本能を持っていたワイマラナー犬だ。1978年から、ウェグマンは20x24インチのポラロイド写真で愛する犬の姿を捉えはじめた。以後20年以上にわたって、ウェグマンは20x24インチカメラの実験を続け、2代目ワイマラナー犬のフェイ・レイや、その血を引く犬たちを永遠の存在に変えてきた。ウェグマンのコレクションには、表情豊かで謎めいた犬たちの写真以外に、人間のポートレートも何作かあるが、彼の作品のなかの人間たちは、青白くて愛想がない――はっきり言えば、犬の写真よりも人間らしくない。マン・レイを写した最後のポートレート群のなかの1作「Rouge」(1982)では、病気に苦しむ犬の目が、知恵と深い物思いに輝いている。それに対して、鼻血を流す着飾った女とシャネルの香水瓶を写した1982年の「Eau II」は、冷たい、時代遅れの(あるいはシンディ・シャーマンのまがい物のような)印象を与える。近年夢中になっている小道具や衣装を使った擬人化をやめ、犬そのもの――筋肉でも、灰茶色のなめらかな毛皮でも、眉毛の優美な傾斜でもいい――に目を向けたときにこそ、ウェグマンの写真は生き生きと輝き、真に美しいものとなるのだ。