新企画展「四万十川」
★★★★★
本書について原研哉さんが貫いてられる「知ること」について考察させる内容となっています。HAPTIC「ハプティック(触覚を喜ばせる)」とされる触知の概念から「Ex-formation(世界を未知化)」するように誘います。
導入部分、プレゼンテーションの為のシミュレーションは色々ありますが、まず本書は、リサーチの導入方法が面白い。
リサーチの対象は人ではなく高知県、四万十川の環境。
通常、リサーチを行う観測者は、観測対象を具体的に数字などで表せるようアクションを試みますが、
学生のリサーチャーはユーモラスで、
「なんでも道に例える」だとか「ものひろい」だとか「足で踏んづけたもの」等々...
普段では思いもつかないような方法を考えだし調査を行っています。
突拍子のない方法にも思われますが、言葉やビジュアル表現を用いた伝達、
対象とリサーチャーの間に人が介在することも手伝って、
四万十川がどのようなものなのか報せる意図が伝わります。
シミュレーションから実際の調査に移ってゆき、
観測の結果に「実体に対してこんな調査方法もあったのか」と気づかされ、興味と好奇心を惹きつけます。
「四万十川は日本最後の清流」と知らさせるより、実感のあるイメージを汲み上げるよう意識を誘導するようです。
何も知らなければ、遠巻きに受け止めかねない情報ですが、
しかし、しっかり拾い上げてきた記述が明確な輪郭を与えています。
調査内容も充実しており、良い意味で、学生だからこそできるレポートに仕上がっています。
前衛的な美術活動のようにも思え、日本のデザイン教育の多様性も併せて知らされます。