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脇役―慶次郎覚書 (新潮文庫)

価格: ¥460
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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湘南ダディは読みました。 ★★★★☆
慶次郎覚書シリーズの10作目をレビューしましたが、その時に番外として本作、脇役についてもご紹介しました。慶次郎シリーズの愛読者は勿論、ご存知でしょうが隠居した南町定町廻り同心、森口慶次郎を主人公とするこのシリーズには慶次郎をささえる多彩な常連の登場者がいて、本作はタイトル通りそれらの脇役を主人公とした作品です。慶次郎シリーズを始めてお読みになる方は本作からお読みになれば、より一層本シリーズの味わいも深くなると思い、決して新しい作品ではないのですがお薦めする次第です。
 池波正太郎さんの鬼平犯科帳や平岩弓枝さんの御宿かわせみもそうですが、長く愛読されるシリーズには必ず魅力的な脇役が登場します。私が好きなロバートBパーカーのスペンサーシリーズでは黒人の殺し屋ホークが時にはスペンサーより魅力的だったりするわけです。
 冒頭篇では慶次郎が主役となりますが、ここで慶次郎が隠居して根岸の寮番になった経緯が手短に語られ、同じ寮番の佐七、養子晃之介の嫁皐月、大根河岸の嫌われ者の岡っ引吉次、慶次郎のかっての部下であった同心島中賢吾、賢吾に使われている弓町の十手持ち、太兵衛親分などの名がさりげなく出てきて、続く篇ではそれぞれが主人公となります。どの篇も、相手の気持ちを察してやりながら、それほど裕福ではないとしてもできれば小さな幸せを大事に生きていければよいという作者の優しい人生観につらぬかれた佳作です。特に蝮といわれるひねくれ者の吉次が優しくしてくれる妹が煩くて飛び出した折に、ふと別れた女房を思い浮かべやり直せるならと束の間の夢をみる「吉次」や、薮入りで息子達が家に帰ってきているというのに、やりきれない裏切られた男と女の諍いを何とか収めて家にもどると、息子達が母親とばかり意が通じ合っているような気がして不機嫌になる「太兵衛」などしみじみとした読後感が残ります。
ドラマの第四シリーズを待つ! ★★★★☆
文字通り、「慶次郎縁側日記」の脇役たちのエピソードを集めた短編集である。
最初に短編が一本。それから脇役たちの話になるのだが、辰吉、吉次、佐七、皐月は分かる。島中賢吾も、まあ名前に聞き覚えはあるが、太兵衛と弥五なんざ、誰だかちっとも分からない。(ちなみに前者は岡っ引き、後者は下っ引きである)いやまあ、私の場合はドラマに照らし合わせているせいもあるんだろうが。
そんな脇役中の脇にまでスポットを当てる北原先生が心憎いというか、マニアックと笑っちゃうべきか。
ドラマは一応、先日に第三シリーズで打ち止めらしい。まだ原作が残っているのに、やけにオリジナルのエピソードを入れていると思っていたら、まだ読んでいない話をドラマでは第二シリーズ〜第三シリーズに持ってきたようだ。
たとえば辰吉とおぶんの関係は、私が読んだ限りではまだ何ともなっていないというか、そもそもおぶんの父親が一巻以来出てきていなかったと思うのだが、この短編ではあれやこれやあって、辰吉がおぶんの面倒を見ている、となっている。早いなあ。
ドラマではおぶんが妊娠して、辰吉は長期休養みたいな扱いになっていたが、この人仕事を他にしていないはずなので、どうやって食っていくのか心配だ。
吉次のエピソードは、彼の内面がとことん描かれている。妹が妊娠したと聞いて、読者は喜ぶが、吉次はショックを受ける。それはまだしも、「もし慶次郎に使われていたら」と思っているのが、可愛いやらおかしいやら。やっぱり彼は、慶次郎が大好きなので。一緒に仕事している夢を見てしまうほどに。
奥田瑛二が解説を書いているので、一緒に楽しめる。もう、吉次はいいですよ。この捻くれていて、実は目茶苦茶いい奴なのが! それを表に出せないのがまた!!
佐七は、ドラマでもあった幼馴染のエピソード。あちらでは事件が起きてオチがきちんとついていたが、この話では回想だけで終わっている。相変わらず、慶次郎にヤキモチ焼いているのが可愛い。ぜひ、石橋蓮司で読むべし。
皐月のエピソードは心温まる。むしろこれこそ、ドラマ化して欲しい一本。