国政を投げ出し、ただひたすら幻想の王国に逃避したままあの世へ旅立った彼。謎多き国王の真の姿を垣間見る事の出来る貴重な一冊だと思います。自殺か他殺か・・・彼の最期に関する謎も多いに興味をかき立てられました。周りを顧みず自己を愛した王・・・それでも私はこの本を読んで、彼の人間性や暖かさを、より一層感じる事が出来ました。憎みきれない人物です。
頭はよかったけれど時代を自分の力でリードするほどの力強さはもたず、その能力は城造りや芸術の(ワーグナーの)庇護へとむかった。日本で言えばちょうど徳川慶喜さんのような役回りではないのかな。
ミュンヘンやバイエルン地方の観光、特にノイシュバンシュタイン城へ行かれる方やヴィスコンティ監督の映画を観た方、ドイツ帝国の歴史を嗜んでいる人にとって結構楽しめるドキュメントです。何となれば脇役がワーグナーであり、ビスマルクであり、ヘーレンキームゼー城であり、主役も近代ヨーロッパの若き国王であってきっとこの個性の、光と狂気に興をそそられるはずです。