CFは入らなければはじまらない
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本書の著者の高木氏と2年間ほどだが、一緒に働いたことがある。当時の氏は秋田日赤の工藤進英先生の下での研修を終え、協立総合病院の消化器内科に新しいCFの技術を導入しようとしていた。本書に詳説してある無痛性のCFの挿入法もさることながら、拡大内視鏡によるピット・パターン診断なども当時は黎明期だったわけで、まさにCFのメッカで研修を受けてきた氏のCFは目が覚めるような鮮やかさであった。
本書の序文の武藤徹一郎氏(癌研有明病院)の言葉に対し、挿入できてこそのCFなのだから、挿入方法の練磨こそが「内視鏡学の本来の領域」なのだと、「無名の内視鏡医」の小生から、返礼の言葉としてお返ししたい。そして読者の皆さんには、本書は現場で実践を積み重ねた百戦錬磨の臨床内視鏡医が書き残さずにはこうしたいられなかったclinical pearlの集積であり、こうした書籍こそが本来、臨床医の書くべきものだということを申し述べたい。有名な医師である必要など毛頭ない。草莽のうちに生きるのが、臨床医の本懐であろう。