美術批評の域を超えたアイデンティティへの問い
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日本の近代化は西洋という他者によって為し遂げられたこと。日本現代美術はこの事実を隠蔽し遠く過ぎ去ったものとして忘却しているという椹木の指摘は美術批評に留まらずアイデンティティの問題を喚起することに成功している。そもそも東洋と西洋との間で分裂症的に発展してきた日本には自らを位置づけるアイデンティティなど持ち合わせていなかったのではないだろうか。西洋という偽造のアイデンティティに依存していることを忘却した日本現代美術において作品を創造することが一体どれほどの意味を持ちうるのか。近代=西洋の超克をめざして創作を行ったとしても日本現代美術は「閉じられた円環」であるが故にポスト・モダンがプレ・モダンに回帰するだけで結局は近代=西洋の呪縛から解き放たれることは