フライトの様子を二人の視点から
★★★★☆
NRT(日本)→JFK(ニューヨーク)までの1フライトの様子を、
チェックをうける本人、そしてそれを横からみている人(チェッカーではない人)の2人の視点から描いている作品である。
この視点の切り替えがおもしろかった。
特に大きな事件が起きるわけではないが、いかに機長が乗客やCAに気を遣っているかがわかる。
飛行機の中で読むと臨場感満点
★★★★☆
国際線の飛行機の中でこの本を読みました。
成田からニューヨークに向かうフライトで、新米機長の村井が
査察機長の氏原から技量のチェックを受けます。
チェックに落ちると機長の資格が剥奪されてしまう為、必死に
なってる新米機長の奮闘ぶりが面白かったです。
ただ、筋書きはなんとなく読めてしまいました。
だって、この新米機長さん、最初から飛行機をカッコ良く飛ばす
事ばっかり考えてるんだもん。お客様の立場になってみれば、
もっと乗客の事も考えて操縦して欲しいと思いました。
ハイジャックや事故という派手な展開がある訳ではありませんが、
空の安全とか、職業倫理を考えさせられる良い作品だと思います。
飛行機の中で読むと臨場感満点で楽しい時間がすごせます。
出来れば北米線が良いですね。
もちろん、家の中で読んでも面白いです。
査察の意義とは何か
★★★★★
査察とかチェックとかはする側はさておき、される側にとっては何なのか
ラストに新米機長が査察機長から何のための査察なのかを聞かされるが
どんな立場でも通る見事な職業倫理だと思う
こういう倫理を打ち立てられる機長という仕事はすばらしいし
やはり惜しい人を亡くしてしまったな、と思う
航空機好きは必読
★★★★★
内田幹樹といえば航空会社の操縦士・機長でその豊富なフライト経験を基に飛行機もののミステリーやエッセイを書いていた人物だ(残念ながら2006年に66歳で亡くなっている)。
内田幹樹の著作ではパイロットとしての経験を綴ったエッセイ集『機長からアナウンス』を古本屋で購入したことがあるのだが、雑然とまとまりが無く、文自体も軽妙洒脱なところが無く退屈だたっため今のところ途中までしか詠んでいない。『機長からアナウンス』を買うついでに続刊の『機長からアナウンス 第2便』も購入しているのだが、勿論こちらは手をつけてもいない。
しかし、この『査察機長』はなかなか面白かった。文庫本の裏表紙には「目的地、雪のニューヨークは遥か彼方、前途には様々なトラブルが待ち受けていた。」と書かれているが、別に機体が爆発したり、エンジンが突然止まったり、ハイジャックされるような致命的なトラブルが起きる訳ではない。フライトはいつものように静かに、淡々と進行する。ただ、乗客は気づかないような小さなトラブルはいくつも起こる。本作では、そういった小さなトラブルを詳細に書き綴っている。
そして、トラブルだけではなく、飛行機のフライトに関わる多くの事象を事細かに記述していく。この詳細な記述はまさにパイロットとして豊富な経験をもつ内田幹樹だからこそ書けたものだ、と言えるだろう。本作を読むと、飛行機を言うものを飛ばすのに信じられないほど多くの手順があり、注意しなければならない事項があるのかという事を思い知らされる。当たり前だが離陸したらあとはオートパイロット任せ、で済むものではないのだ。
ちなみに私がこの本を読んだのは羽田空港からニューヨークに向かう飛行機の中。本作の「リアルさ」が何となく感じる事が出来、なかなか良い体験だったと思う。飛行機の機体はボーイング747-400ではなく777で、目的地の空港はJFK(ジョン・エフ・ケネディ空港)ではなくニューアーク・リバティー空港という違いはあったけれども。
この小説はノンフィクション風味のフィクションと言えるだろう。作中のニッポン・インターナショナル・エアのモデルは間違いなく作者が所属したANAだし(文庫本の巻末の解説でも「月刊エアライン」編集長の佐藤言夫がそう指摘している)、査察される若手機長村井、村井を査察するチェッカー氏原、ベテラン大隈といった登場人物もしっかりと書けているが、彼らも作者が長いパイロット生活の中で出会ったパイロットがモデルになっているのであろう。
派手なサスペンスやミステリーが好きな方にはオススメできませんが、飛行機に興味がある人は間違いなくハマる名作だと思う。自分はは『機体消失』や『操縦不能』のような内田幹樹氏による航空サスペンスものも読んでみたくなりました。
やっと文庫化。待ってました!
★★★★★
元ANAパイロットとして数多くのフィクション、ノンフィクションを世に送り出した著者の著作の中で、最も好きな作品です。
代表作「パイロット・イン・コマンド」のような緊急事態に陥るわけでもなく、成田発ニューヨーク行きのチェック・フライトが淡々と進行します。
若くして-400の機長となった村井、伝説のチェッカーとして恐れられる氏原、大ベテランパイロットの大隈。このコクピットの3人を軸に、静かに話は進みます。
JFK空港の天気は微妙。果たして2年目の新米機長はどう決断するのか。
気がつくとぐいぐいと物語に引き込まれ、まるで自分がジャンプシートに座ってフライトを体験しているようでした。
早すぎる内田氏の死を悼みます。もう少し著作を残してほしかったですね。