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嵐が丘 (新潮文庫)

価格: ¥830
カテゴリ: ペーパーバック
ブランド: 新潮社
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勇猛果敢 ★★★★★
よくぞここまでくだけた訳をしました、というところで評価。
前世紀までの訳は硬くて、これでようやっと読む気になったもんで。
これからも色んな訳があっていいとも思うし、酷評することもないと思う。
わたしは愉しめました。

そして内容としては、如何にも極北だけれども、恋愛のひとつの明確なパターン化ではありますね。
想像したのは、風と共に去りぬ (1) (新潮文庫)のスカーレットが、真っ先にアシュレイと結婚し果せた場合が、こんな具合かと思いました。
つまり、キャサリンがスカーレット、エドガーがアシュレイ、レットがヒースクリフみたいなポジショニングです。
そうすると、どうして人生とは、こうもままならず、人とは天邪鬼なものかと嘆息の思いにさせられたりもしましたね。
情念の深さをここまで描ききるのか ★★★★★
世界的な名作としての知名度の割には、日本ではあまり受け入れられているとは言い難い感じの作品。

イギリスの舞台となる地の気候を彷彿させる鬱々とした暗さに、読もうとしても放り投げてしまう方も多いのかも知れない。その独特の雰囲気に浸っていけるかどうかがカギ、浸り始めたらその深さに呑み込まて行くはず。

広い荒野の真ん中にぽつんと立つ古い洋館にでも迷い込んだような気分で。外は厚い曇、唸る風の音。その古い洋館にかつて住んでいた住人が残した古い記録を見つけて、それを紐解くような感じで読むといいと思うよ。

情念の深さをここまで描ききるのか、といった内容の作品。

この作品を堪能できたら、ケイト・ブッシュの嵐が丘という歌も聴いてみると良いかも。ケイト・ブッシュがこの作品からインスピレーションをもらって作ったという歌、この作品に描かれている情念がよく表現されている。Kate Bush,Wuthering Heights
訳の悪さはあっても面白い ★★★★☆
読み進めているとどうもつぎはぎのような、話の流れが悪いような
感じが否めず気になったのですが、どうも訳のまずさにも原因があ
るようですね、こちらを見る限り。
しかしそれにしても引き込まれる物語でした。
恋愛物語というのはこの小説を正しく言い表していないように思え
ます。

この物語を恋愛者として読むと、全体として「そこに愛があるのか?」
強く疑問に思うことでしょう。
実際この物語の登場人物はみな「思い」は強いけれど、愛が深いかと
云われると疑問に感じる人々ばかりです。
ヒースクリフの様々な所業も、恨みというより、後半になると、「自分
がそうしたい!」という思いに、自分自身が振り回されているように
感じました。
当初思い続けていたヒンドリーへの恨みつらみなどは、最後のほうはほ
とんど何に由来するか自分でも分かっていないのではないでしょうか。

最後は取って付けたような終幕にも感じますが、結局人一人の思いで動
かせるものなぞたかが知れている、という教訓のようにも感じました。

分厚く手に取るのを憚るような長さに感じられるでしょうが、軽い筆致
で中身もそんなに重くないのですぐ読めます。



復讐の教科書 ★★★★☆
〔ご注意:新潮文庫の田中訳で読みました。こっちのほうが賑わっているのでこっちに投稿しました〕

私は本書を、水村美苗『本格小説』(※)の読後に読んだ。『本格小説』は味わい深い恋愛小説だったので、『嵐が丘』もその類と思っていたし、昔からそんなイメージではあった。だが読後、私にはこの本は「復讐の教科書」としての印象が強くのこった。

虐げられた捨て子ヒースクリフが、己を虐げたものの子供たちに横暴をふるい、また彼らの財産をのっとり、復讐を的確に一つ一つ実現してく様子は読み手に強烈な印象を残すもので、文章上の瑕疵(原作のそもそもの荒削りなところや、こなれない田中訳)を吹き飛ばす凄まじさがある。ヒースクリフの復讐の方針は、例えば「あいつを見てると、おれはいい気持だ」ではじまる367〜368頁(他訳で興味ある方:21章の中ほどです)などがよいリマインダーとなる。ここにはヘアトン(ヒースクリフをいじめぬいたヒンドリーの息子)への基本的な態度が書かれているのだが、ほとんど得体の知れない悪魔であり、現実にギリギリ存在するかしないかの境界的な人物造形である。楽しいだけの小説ならほかにもたくさんあるが、現実のぎりぎりの淵をのぞいてみたい人、平穏な心的生活に揺さぶりをいれたい人などが読んでみると、衝撃をうけると思う。

(※)
『本格小説』は『嵐が丘』を下敷きにしているという。孤児東太郎が実力で富豪になり、その後、かつて世話になると同時に惨めな気分も味わわされた裕福な家の財産を手中に収めていく。その設定面では、『嵐が丘』と似ているところがある。しかし東にはヒースクリフのような背筋が寒くなるような復讐心や悪魔的な横暴さはない。社会的に成功し、あぶらギッシュなところはあっても、昔から一途に思う女性に対してはいつまでたっても不器用にしかできないかわいいヤツである。似た設定なので、一度読んでみて、その味の違いを、特に主人公の違いを比べてみるのもいいかもしれない。
翻訳が悪いです… ★☆☆☆☆
初めて読んだ『嵐が丘』。あまりにも有名な小説なのに、肝心の文章がなんだか変。これで名作?と思ったんですが、訳のせいかと思うと納得。体言止めの多用。何度読んでも何を言ってるのかわかりにくい台詞…。いちいち引っかかりますね。なめらかに読み進めません。別の訳で読み直したいです。