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室町の王権―足利義満の王権簒奪計画 (中公新書)

価格: ¥798
カテゴリ: 新書
ブランド: 中央公論社
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中世において最高権力者は誰だったのか−権力と権威の相克− ★★★★★
 日本中世は南北朝内乱を境として前期と後期に区分される。その分画期に政治的頂点を極めた人物が足利義満である。本書は足利義満による皇位簒奪未遂にスポットをあて、権力と権威の相克の視点から中世日本における政治構造の特質を解明しようとした“古典的”著作である。
 簡単にいえぱ、中世社会において(南北朝期)の最高権力はどこにあったのか、との問い掛けに対して著者は“治天”としての地位にあった将軍との答えを導出している。いうまでもなく“治天”とは天皇の上に位置する地位である。それは政治権力者としての天皇ではなく“天皇家の家長”の地位を指す。
 こうした前提を踏まえることなく本書を読むことは“制度としての国家”とそれを実際に運用していた“政治組織としての家”とを混同する危険があることは当然であり、そこから天皇制の持つ意味を理解することには意味がない。
 実際に一般の歴史書と呼ばれる書籍の中にはこうした“国政と家政”の関係と相違、政治組織としての朝廷と幕府それぞれの統治構造など踏まえず、恰も天皇や将軍がピラミッドの頂点に位置したように書かれているものが多い。古代の律令制の実例を引くまでもなく政治組織としてのシステムは天皇に権力があったわけではない。
 なぜ中世という時代にあって天皇が存続したかといえば、それは天皇制のもつ権威のみが残されていたからであり、天皇自体は権力を持ち得なかった。と同時に一方の武家に代表される幕府も実態としては守護大名の連合体であり、戦国大名のように領国支配を行うことも困難だった。こうした中にあって、足利義満が目指したモノ、それは将軍としての地位を捨て太政大臣としての地位も捨て“日本国王 源道義”としての地位に他ならない。
 ここで着目すべきは“源”の姓である。これは名字ではない。家格としての源家の家長である、とのことであり、同時に全ての権力を自在にできるとの意味が込められていることに着目しての議論には注目すべきである。形としては天皇家の“治天”に等しい地位である。
 こうした点で本書は以後の中世史研究にとって新たな視点を提示したものと評価できる。
 
天皇制度最大の危機 ★★★★★
 1942年生まれの中世日本史研究者(文学博士)が1990年に刊行した本。本書では天皇制度存続の理由を、あくまでも政治史的に(網野批判)解明するために、足利義満の王権簒奪計画に焦点が当てられる。院政期以降、日本国王の地位は天皇から治天に移行し、承久の乱以降、東国国家たる鎌倉幕府は、西国王権の改元・皇位継承に干渉した。南北朝期に西国における治天の世俗権を幕府が接収した後、母系で天皇家と縁戚関係にある足利義満は、軍事的・経済的な実力を背景に、武家執奏の権限、廷臣・僧職の官位叙任権の掌握、北山第での国家祈祷(天皇家の祈祷を上回る、仏教修法・陰陽道祭)権の獲得、改元拒否、伏見宮家への抑圧等を通じて、天皇の権威に挑戦する。彼は朝廷の官位を登り詰めた後、自ら官位を辞して律令制の外に出た上で、巧妙に圧力をかけて公家を自己に従わせ、上皇としての礼遇をとらせた。また彼は明から日本国王に冊封されたことを利用し、かつ終末論的な百王説を流布させ、天皇家の権威の低下を図った。更に義満の妻は天皇の代理母、息子義嗣は親王として遇されたことにより、足利家は将軍と天皇を輩出する家柄となる寸前まで至ったが、義満の急逝と幕府首脳の政策転換により、皇位簒奪は未遂に終わった。以後、幕府の弱体化と後花園天皇期以降の綸旨乱発の中で、天皇の権威は部分的に復活する(したがって戦国期天皇制没落論を著者は批判する)。著者はこうした義満の長年にわたる周到な宮廷革命計画が挫折した背後に、足利家専制・家職制破壊への幕閣の反発を見、また中央政権にとっての脅威の有無、外来思想との関係と、天皇権威の浮上とを関連づける。天皇家の権威という目にみえにくいが重要なテーマを、残された史料を駆使して実証的に論じた本であり、生き生きとした叙述(朝廷側の悲哀等)という点でもお勧めできる本。
天皇制について考える必須の書かも ★★★★★
足利義満に皇位簒奪の野望があったことはだいぶ知られてきたが、その詳細と結果が解説されている。
足利義満は自身が天皇になろうとしたわけではなく治天の君になろうとして、実際なりえたというのがその真相らしい。
治天の君とは実権を持った上皇、そして実質的に天皇の上を行く存在として君臨していた。そして治天の君は天皇未経験者でもなりえた。
また、天皇の藩屏のはずの公家たちの間でさして抵抗した様子がなかったこと、逆に朝廷から送られた太上法皇の位が武家幕府側の意向で辞退されたなど、非常に興味深い話が続く。

将来天皇制をめぐる論争が起こることは必定の情勢、そのまえに目を通しておくべし。

興味深い足利義満の皇位簒奪未遂劇 ★★★★☆
足利義満といえば、あのアニメ「一休さん」に出ていた「将軍さま」である。その義満が天皇の座を狙っていたとあれば、思わず聞き耳立てずにはいられない。彼の準備手套には驚かされる。天皇が拠り所とする神道に対して陰陽道を、天皇が日本統治の根拠にしている記紀の記述、万世一系性に対して、明朝から封を受け「日本国王」の称号を創造して対抗し、置き換える。貴族・僧侶へのたぶらかしも見事なものである。ただ足利義満が息子を「天皇」にしても、天照大神以来の「天孫族」の皇統が絶えてしまう訳ではないことには、留意しておく必要があると思う。足利家は源氏の傍流であり、源氏は清和天皇(学説によっては陽明天皇)の直系の子孫だから、結局、義満も男系をたどっても皇族に連なる人間だからだだからこの簒奪劇は、「天孫族」の主流と傍流の争いだと捉えることも出来ると思う。
もはや古典といってもいいかも ★★★★★
天皇制を考える上で欠かせない名著です。
もはや古典と言ってもよいかもしれません。

中世の天皇制を巡る議論では、網野善彦氏の一連の
研究などにより、非農業民との関係が話題にされますが、
本書はそのような視点をとらず、天皇制と室町幕府
との関係を政治史的に真正面から取り上げたものと
なっています。