この本のすばらしい点は、一つの文様の項目中に
その文様の変形型がいくつものっているので、
それらの文様の共通部分に着目することで
その文様の本質がさらによくわかる点です。
たとえば「立涌(たてわく)」という項目では
「立涌」のほかにも
「雲立涌」「波立涌」「桐立涌」「葡萄立涌」「破れ立涌」
などさまざまな立涌の文様が紹介されているので、
それらの文様の共通項である、向かい合わせに並べられた
波打つ縦縞が立涌文様の本質であることが理解できます。
この本質がわかっていれば、たとえ本に載っていない文様に
出会っても、その文様を各要素に分解して、その文様が大きく
何の文様の部類に分類されるのか理解できるでしょう。
その応用性を身につけられるのがこの本の良さといえます。
文様にはすべてふりがながふってあり、4cm四方の模様の
モノクロ図案がそれぞれついています。
さらにキモノや美術工芸品などに使われた例も豊富な写真で
紹介されています。
惜しまれる点はカラーページが少ない点です。
オールカラーだったらさぞかし美しい本になっていただろうと
残念です。そういう意味で☆を5つではなく4つにしました。