イーノがはじめて世に知られたのはロキシー・ミュージックの一員としてだった。シンセサイザー奏者としてバンドの他の楽器を電子的に“処理し”、それがレコーディングの過程そのものを自らの表現手段として選ぶ第一歩となった。次なるキャリアでは、ポップス界切っての刺激的なアーティストとして、“アンビエント音楽”などのあいまいなサウンドを精力的に追い求めるだけにとどまらず、デヴィッド・ボウイやトーキング・ヘッズやU2の重要作のプロデュースも手がけた。そんななか1970年代には一般向きのアルバムもほんの数枚制作している。とりわけ本作は『Before and After Science』と並んで、もっとも息の長い人気を誇るソロアルバムに挙げられるだろう。
本作では、ディストーションを効かせた(ロバート・フリップの)ギターを、さまざまなキーボートやエキゾチックなリズムとミックスさせて、瞑想的でありながら多彩なタッチに満ちたサウンドを作りあげている。なかでも魅力的なのは、フリップが驚くべきギターワークを聴かせる軽快な「St. Elmo's Fire」と、ひたむきな実験主義者であっても柔軟な心を持つことができると教えてくれる「I'll Come Running」だ。また、なんとも意外なことに、フィル・コリンズがドラムとパーカッションで3曲に参加している。(John Milward, Amazon.com)