これまで、世間では「育児休業を所得できないのは企業が悪い」とか「企業は育児休業を取得させないことで不当に利益を得ている」など、「企業は育児休業をコストとして当然に負担すべき」といった論調が多かったように思う。また、「家事も育児も男女が平等に負担すべき」といった教条的な男女平等論が依然として根強く、育児休業の議論でもともすればこうした画一的な価値観を押し付けるような感情論がみられがちだ。
この本は、そういった感情論に陥ることなく、現実的な議論が展開されている。男性の育児休業取得の企業にとってのメリットの可能性を指摘するとともに、休業中の職場の現実的な対応方法を提示することで、男性の育児休業が企業にとって単なるコストではなく、活性化や動機づけ、ひいては風土改革にもつながる可能性があることをかなり説得的に論じているし、多様なあり方と自由な選択を尊重する立場から冷静に書かれている。
なるほど、これなら男性の育児休業10%もできるかもしれない。そう思わせる本である。