ビジネスマンにもお勧め
★★★★☆
今更ながら世界と日本の航空事情の格差に驚かされた。
本書は日本の格安航空会社の発展が遅れている理由を歴
史的経緯から分析するだけでなく、海外で成功を収めて
いる活躍するサウスウエストやライアン、エアアジアと
いった航空会社を紹介し、コスト削減やサービス面の工
夫を見ながらその成功の秘訣を探る。
本書のように「沖縄ー札幌間が1500円」のような話
が実現すれば、我々一般国民だけでなく航空会社や地方
自治体にも大きな利益をもたらすはずだ。政府は高速道
路無料化よりこちらに注力したほうが得策では?
世界のエアライン情勢がよくわかる
★★★★★
飛行機チケットの値段は、最も「わかりにくい」商品の一つ。
「IATA(国際航空運送協会)が定める正規料金」が価格統制をひいていた時代ですら、同じ会社の同じ便でも全く違う料金のチケットが売られていた。そして、最近は大手航空会社とLCC(ロー・コスト・キャリア)では想像しにくいぐらいの価格差がある。
私は以前から常々「どういう仕組みになっているのだろう」と思っていた。
私は、本書を読んで、(1) 戦後、IATAによる価格決定がなぜ行われてきたか、アメリカと他国の利害はどうだったか、(2) オープン・スカイ化の中で、世界の大手航空会社がいかにダイナミックに再編を果たしてきたか、(3) LCCがなぜあんなに安い価格でサービスを提供できるのか、(4) 日本の国土交通省(旧運輸省)の航空行政がいかに保護主義的で世界の潮流に取り残されたものであったか、を知った。
本書は、何よりも、世界の航空業界のダイナミックな動きに興味がひかれます。そして、日本の役所に共通する「消費者の利益より、業界の秩序を重んじる」、「世界の潮流に遅れ、日本の競争力を削いでいる」といった体質がよくわかる本です。
そして、諸外国の航空会社の再編淘汰のすさまじさを読んで、「JALを無理に延命させたことは正しかったのか」と疑問を感じました。
エアラインの問題に興味のある人だけでなく、幅広く読まれるべき本と思います。
日本に格安航空はなぜできないのだろう?
★★★★☆
1000キロ以上離れた目的地へ数千円で飛んでしまう格安航空会社(LCC)。欧米はもちろん、遙かに経済発展が遅れた東南アジアでも、日本同様の経済システムを築いた韓国でも生まれているのに日本ではできない。本書は格安航空の誕生から収益構造、利用する上でのマイナス点も解説する。オンライン予約のみ、座席指定なし、機内無料サービス一切なし、座席きつきつ、運休時の振り替えなし、欠航多発、キャンセルなし、などなど色々あるが、それでも驚異的に安い。「自己責任だけど安い」ということだ。
日本の場合、税金や空港使用料が運行コストの3分の1以上を占める。エアアジアはなんと日系キャリアの5分の1の運行コストで飛んでいるのにも驚いた。同じ月に上梓された新書のJAL崩壊 (文春新書)と併せて読むと、パイロットがハイヤーで出勤するJALに比べ、空港滞在を1分でも短縮させるために会長も客の荷出しを手伝うサウスウエスト、エアアジアの差たるや…チーム精神やコスト意識のかけらもないJALが今まで航空業界で生き残ってきたこと自体が日本の航空行政の保護主義を明瞭に示しているように思う。また、日系キャリアの成長期に威力を発揮した販売チャネル・拠点の多さが、停滞期、ネット時代の今、逆にネット移行やコストの点で足を引っ張りつつあるのもレコード、新聞、出版、銀行、生保などと似ているな、と思う。
このほか、前半ではメガキャリアのアライアンスの確立の経緯も書かれていて面白く読める。鹿児島へ行くのと、欧米に行く料金がさして変わらない航空行政は一体どこを向いて仕事をしているのか?しみじみ感じさせられる本だった。
格安航空会社の歴史と現状、そして日本
★★★★☆
タイトルからは、日本の航空行政の批判のように思えたが、
内容の大半はLCC(格安航空会社)の歴史と現状である。
世界でどのようにLCCが生まれ、どのような変遷を経て、
そして現在はエアラインがどのような勢力図にあるのか、
それらを知るのには最適である。
日本の航空業界についての言及は十分ではないものの、
いかに世界とかけ離れているかがよくわかる。
このままの硬直的な航空行政では、
「敗戦」が見えているのは確かである。