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風林火山 (新潮文庫)

価格: ¥540
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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歪んだ山本勘助の心の動きが面白い ★★★★☆
そっけないまでに美しい文章で書かれた小説。根から素直でない性格の勘助の視点で描かれているので、読者は彼自身の気持ちの揺れ動きとともに、彼の思考の非論理性に気づき、楽しむことになる。信玄の子供の描写についても、勝頼については痘痕も靨の要領で描き、義信については意地悪に描写する。義信に対する認知の歪みが、最後の合戦で見直されるところなど味わい深い。

最後の川中島の合戦は、日本人の琴線に響く戦争物語の金字塔のひとつだ。それを武田陣営から見た前半の絶望感、そして別働隊の到着を待ち焦がれる勘助の気持ちとその最期は読み応えのあるもの。

武田信玄がとにかく大好きだった新田次郎さんの「武田信玄」を併せて読むのもまた一興だと思う。蛇足だが、なぜ井上靖さんはわざわざ「風林火山」と名付けたのだろうか。その辺りも気になる。
誰かに心から信頼されるってことは ★★★★★
誰かに心から信頼されるってことは、
人間にとってものすごいエネルギーになる。
殊に、それまでぞんざいな扱いを受けてきた人間にとっては。
高校時代、この小説を読んで知りました。

この本に出会うまでは、
「高潔で正義感が強くて人に好かれる。しかも見た目がいい」
…というのが、小説の主人公に抜擢される条件なんだと思ってました。
勘助は全然違う。
高校生だった私は「こんな主人公でだいじょぶか…?」と、
正直、戸惑ってしまいました。
…が、その予想が裏切られるのは、
たくさんあるレビューを読んでも分かること!

序盤、かたくなだった勘助が、
信玄や由布姫に信頼されるにつれ(…時には振り回されるにつれ・笑)、
だんだんと変わって行く様が印象的です。
そして終盤には、憎かった義信まで守ろうとする。
読む人それぞれ、感動する部分は違いますけど、
私はこの小説に感動したのは、「人間同士の尊敬と、(恋愛感情、親子の愛以外の)愛」でした。

感動しやすい質の人は、クライマックスを電車の中で読むのはやめましょう。
私は電車を乗り過ごした挙げ句、泣いてしまい、
周りにいた通勤客に心配されるという失態をしてしまいました…。
有名作だが果たして名作か ★★★★☆
武田信玄の軍師・山本勘助の物語。平成19年大河ドラマの原作。この作品が巨匠による有名作であることは承知している。文章の上手さはさすがである。ここでは不満をのみ述べる。

現代の脳科学を駆使しても、個々の人間の瞬間瞬間の考えや行動を論理立てて説明することは到底不可能である。しかしそれにしても、この作品には「逃げ」が多すぎる。直感やら無意識の行動やら思わず口をついて出た言葉やら、登場人物が自分の意思に基づかない動きを繰り返し、それが分析もされずに放置されている。しかもその動きを基に小説が進むから、筋書きが随分ご都合主義に思える。小説とは、人間の心の機微を、わからないならわからないなりに、読者に納得させるか、少なくとも考えさせるためにあるのではないのか?ここでは非論理性の根拠を暗示されることもなく、登場人物が唐突に意想外の動きをするだけであるから、読者は疑問を感じたまま、ただ諾々と筋を追うしかない。もっとも、私の読みが浅いのだとしたら、ただ頭を垂れるしかないのだけれど。

なお解説は私には理解できない文章であった(私が読んだのは昭和61年60刷なので今とは違う解説者かもしれない)。これも文芸評論家として一時代を築いた人の作であるが、こんな晦渋な論理をこねて、自己満足以外に何の意味があるのか。私には嫌悪感以外、何も残らない。
異相の士を圧倒的な筆致で描く ★★★★☆
 井上靖の作品を読んだのは高校時代に『蒼き狼』や『敦煌』を読んで以来であり、実にほぼ15年ぶりのことであった。私は歴史小説はほとんど読まず、司馬遼太郎を少し読む程度であり、井上靖の歴史小説の特徴を本書を読んだのみで語るのは早計であろうが、文章は平易で美しく、冗長さが無いので読みやすかった。余計な話がゴタゴタ付く司馬遼太郎とは対照的であるが、中には井上靖の作品はそのシンプルさがゆえに面白みに欠けるという読者もいるのかもしれない。

 本書は武田信玄の軍師山本勘助を描いたものである。奇才にして異相の軍師が醸し出すオーラを井上靖は表現することに成功しており、さすがである。そして、その山本勘助をもきりきり舞いにさせる信玄と由布姫の人物設定も見事。実在の彼らがどのような人物なのか私はよく知らないが、この3人が織りなす物語としてこの小説はよくできている。これを機に、井上靖の他の歴史小説を読んでみようという気になった。
歴史小説というよりは純文学的 ★★★☆☆
昨年の大河ドラマの原作ということで、かなり時代遅れですが、今更のように読んでみました。
井上靖氏が描く登場人物の心象風景を描く物語としては優れているように思えますが、これを歴史的人物に仮託する手法には疑問を感じました。いろいろな細部において、必ずしも歴史的事実に基づいたストーリーとも思えず、歴史小説としては新田次郎氏の武田信玄の方が好ましく感じました。
歴史上の人物にではなく、現代小説として描くか、もしくは、このような伝説的とはいえ高名な人物にモデルを取るのではなく、全く仮想の人物を主人公したほうが、この作品の魅力が増したように思えます。