まず、これは裁判であり条約ではないので領土の割譲や賠償金について言及するものではありません。
領土の割譲についてはサンフランシスコ講和条約、賠償金については日本政府がどれだけ他国に支払っているのか今日でも明白でしょう。
この裁判は昭和天皇の誕生日の4月29日に開かれました。この裁判のために必要な費用27億円は日本政府が負担したそうです。
敗戦後で物理的・精神的に荒廃した日本政府がこれだけのお金を費やして行われた裁判の内容はどうであったか。近代法治国家では
禁止されているはずの”事後法”でした。加えて偽証罪は無効。これだけでも”リンチ裁判”と呼ばれるに値するでしょう。
もしこんな裁判で貴方が被告に立たされたらどう感じますか?このような何一つ正しい法的処理を経ることなく戦争犯罪人というのは
決められたのです。それぞれが絞首刑や終身刑に課せられたのですが、その絞首刑の執行日は皇太子殿下(現天皇陛下)の誕生日である
12月23日に行うという徹底した陰湿ぶりです。
これだけの事実を知りながら、まだこれを”理性的な戦後処理”と呼べるでしょうか?
もし日本がこれまでやってきたやり方で太平洋戦争の戦後処理をするなら、とてつもない賠償金と領土の割譲を強いられていたでしょう。東京裁判は勝者の報復的政治ショーとよく批判されますが、幸い、連合国は、賠償金と領土の割譲などを求めず、戦争指導者を裁くという方法をとりました。最大の交戦国だったアメリカと中国に日本は賠償を払わずに済みました。東京裁判は、理性的な戦後処理の一環だったと思います。
東京裁判を批判する人は、連合国に賠償金を払い、領土を割譲して戦後処理をしたほうが、戦争指導者を裁くことよりも日本人にとって
良かったと思っているのでしょうか。
本書はその裁判で闇に葬られた日本の言い分を細かく知ることができる価値ある一冊だと思う。日本のとった行動の真の理由がここにある。
歴史というものを考える良い機会になった。